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電子書籍メディア論・週刊イーブックストラテジー
新時代のデジタルパブリッシングとソーシャルメディアで変わる「読書革命」



 

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●2010年8月11日号について

「8月11日号」は、「マルチメディアの焼き直しか、電子書籍の新表現を生み出すか? Enhanced eBook Designing(エンハンスド・イーブック・デザイニング)」がテーマです。オーディオやビデオが組み込まれた電子書籍「エンハンスドeBook」について取り上げてみたいと思います。マルチメディアは、娯楽性を高めるリッチコンテンツ化だけが目的ではなく、音声読み上げやテキストと音声の同期、映像のクローズドキャプションなど、何らかの障がいを持つ読者にとってもメリットのある重要な技術です。また、デジタルでしか実現できない新しい表現を生み出すきっかけになる可能性もあります。少し視野を広げて、見ていきたいと思います。

図版が多いため、iPadもしくはパソコンを推奨いたします。パソコンで読む場合は「Webページ版」、iPhoneやiPadを使う場合は「EPUB版」、その他のモバイルデバイス(携帯電話など)は、メールでご覧になってください。

図版データは、記事の最後に掲載されています。
データサイズが、3.03MBありますので、メルマガ専用ページのWebページ版からダウンロードしてください。
図版データには、PSD、PDF、AI(Illustrator CS3バージョン)の3つの形式が含まれます。

 


 

●EPUB版(iPhone Stanza用)のダウンロード

●EPUB版(iPad iBooks用)のダウンロード



 

マルチメディアの焼き直しか、電子書籍の新表現を生み出すか?
Enhanced eBook Designing(エンハンスド・イーブック・デザイニング)

Enhanced eBook Designing

 

特集「マルチメディアの焼き直しか、電子書籍の新表現を生み出すか? Enhanced eBook Designing(エンハンスド・イーブック・デザイニング)」。
ビデオをEPUBフォーマットに組み込む方法を解説し、電子書籍の新しい表現を創出する可能性について考えてみたいと思います。
EPUBフォーマットについての復習、エンハンスドeBookのパブリッシャー「Vook」の紹介、iBookstoreおよびKindle Storeで販売されているエンハンスドeBookの検証、さらに、実際にどうやって作成するのか解説していきたいと思います。EPUBのサンプルもダウンロードできますので、実際にiBooksで試してみてください。

特集の内容:

  1. EPUBフォーマットの構造
  2. EPUBはHTMLの血筋をひくフォーマット
  3. VookのエンハンスドeBook
  4. 実用書に適しているが文芸では扱いが難しい
  5. Kindle Storeで販売されているエンハンスドeBook
  6. 「ページに埋め込むタイプ」と「巻末にまとめて収録するタイプ」
  7. iBooksで読むEPUBエンハンスドeBookの作成
  8. EPUBファイルにビデオを組み込む方法
  9. 90年代マルチメディアCD-ROMの焼き直しではない「新しい表現の創出」

 

EPUBフォーマットの構造

エンハンスドeBookについて解説する前に、EPUBフォーマットについて復習しておきたいと思う。
2007年9月にIDPF(International Digital Publishing Forum)が策定した「EPUB 2.0」(現在のバージョン)は、名称変更する前の標準化団体Open eBook Forumが策定していた「OeBPS」の後継規格である。OeBPSをベースに3つの仕様(コンテンツ構造の仕様「Open Publication Structure(OPS)」とファイルをパッケージ化する仕様「Open Packaging Format(OPF)」、そしてアーカイブ化する仕様「OeBPS Container Format(OCF)」)で構成したのがEPUBだ。

コンテンツ部は、W3Cの技術標準である「XHTMLおよびCSS」、もしくはDAISYコンソーシアムの「DAISY 3」DTBookを採用することができる(DTBookは、Digital Talking Bookを表す)。

 

EPUBで扱えるメディアフォーマットは以下のとおりである。オープンな技術標準が中心になっているため、ライセンス料を支払う必要もなければ、突然開発が中止になって、将来動かなくなる心配もない。DRMフリーであれば、EPUBのパッケージからコンテンツ本体を取り出して、Webブラウザで閲覧することも可能なので、10年後、20年後も読める電子書籍フォーマットだと理解してよいだろう。

 

 

EPUBはHTMLの血筋をひくフォーマット

DAISYコンソーシアムの規格を採用できるため、アクセシブルな電子書籍フォーマットとしても信頼性が高い。また、オープンな規格なので、無償で使えるオーサリングツールや検証ツールがあることも制作者にとっては大きなメリットになっている。電子書籍が作りやすい環境を整えないかぎり、コンテンツを増やし、市場を拡大することはできない。最初は「表現」が乏しくても、普及させる仕組みを優先したほうがよい。HTMLが登場したときは、テキストしか表示できなかったが、普及と共に仕様が拡張され、印刷物に近い高度なリッチレイアウトが可能なところまできた。最初のHTMLがSGMLのような複雑な仕組みを継承していたら、作成できる人は限られ、ここまで発展しなかったかもしれない。

電子書籍の場合も、まずは(高度な技術がなくても)低コストで大量生産しやすいテキスト主体の本に適したフォーマットからスタートし、後からリッチレイアウトやマルチメディアに対応できるよう拡張していけばいよいのではないか。紙の本の再現精度を高めることは重要だが、市場を大きくするには、読者にとって「読みたい本が選べる」数十万冊規模の品揃えが急務である。

 

EPUBが、HTMLの血筋をひくフォーマットなら、現在策定中のHTML5やCSS3は注目しなければいけない技術標準である。
今回のテーマであるiBookstoreやKindle Storeの「エンハンスドeBook」は、HTML5を使って作られている。これは、Appleの先行実装によって可能になっている。Kindle Storeの「エンハンスドeBook」が、WebkitのSafariを搭載しているiPhone, iPod touch, iPadだけを対象としている理由がぼんやりと見えてくるはずだ。そして、新しいKindleがWebKitベースのブラウザを採用するのも自然な流れである。

ちなみに、Amazonが公開しているKindleのパブリッシングガイド(マルチメディア・ガイドライン)でも、iBooksと同様にHTML5の記述方法について解説されている(※現在公開されているパブリッシングガイドの目次には、マルチメディア・ガイドラインの項目が記載されていないので、ご注意)。

欧文のフォーマットと言ってもよい現在のEPUBでは、高度な日本語組版の表現は困難だが、次期バージョンには大きな期待がかかっている。また、暫定処置としてリーダーアプリケーション側で、表現力を高める試みも増えてくるだろう。とにかく、”オープンな規格”であることが重要なポイントになる。

EPUBやAmazonのフォーマットをベースにして(リッチコンテンツである)「エンハンスドeBook」を語れる日が来るとは思わなかったが、Webで可能な表現や技術を取り込むのは時間の問題かもしれない。エンハンスドeBookといえば、1990年代に流行ったマルチメディアCD-ROMを思い浮かべる人が多いと思う。現在リリースされている作品を見て、たんなる焼き直しと感じているかもしれないが、新たな表現の発見につながる可能性も否定できない。今回は、リッチコンテンツと電子書籍について考えてみたい。

 

 

VookのエンハンスドeBook

エンハンスドeBookの代表的なパブリッシャーとして有名な「Vook」の電子書籍を見ていこう。Vookは2008年、Brad Inman(ブラッド・インマン)によって設立されたエンハンスドeBook専門のパブリッシャーである。Vookは「Video + Book」の造語。Web版とiPhoneアプリ版があり、Web版はAdobe Flashを採用、ブラウザ上で読むことができる。iPhoneアプリ版はApp Storeで購入できるが、データサイズが大きいためWi-Fiでダウンロードする必要がある。現在、59タイトルがリリースされており(2010年8月)、年内250タイトルまで増やす計画になっているようだ。

 

Vookは現在、全タイトルをiPad用に改訂している。初期にリリースされた「Gary Vaynerchuk's Crush It!」はすでにiPad仕様になって販売されている。iPhone版と比較してみよう。

気になるデータサイズだが、ほぼ同じである。つまり、ビデオの画質はそのままで、UI(ユーザーインターフェイス)だけをiPadに最適化したバージョンだということがわかる。

 

※このページは「2010年8月11日号」のサンプル版です

 


発行者:境祐司(さかいゆうじ)Youji Sakai
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