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The Future of Reading

メールマガジンのサンプルバージョン(エピソード1のみ)

電子書籍メディア論・週刊イーブックストラテジー
新時代のデジタルパブリッシングとソーシャルメディアで変わる「読書革命」



 

※このページは、サンプルです。「メルマガ専用ページ」にアクセスしてください

 


●メルマガのEPUB版(iPhone, iPod touch, iPad)について

 


 

●2010年8月18日号について

8月18日号は、「電子書籍メディア論(仮)」のアルファ版を掲載します。7月21日号(電子書籍メディア論 I – ユニバーサル・イーブックとトランジショナル・イーブック)、7月28日号(電子書籍メディア論 II - 電子書籍の歴史)に続く第三弾です。
配信のスケジュールは、以下の予定で準備しています。

アルファ版を掲載する号:

パソコンで読む場合は「Webページ版」、iPhoneやiPadを使う場合は「EPUB版」、その他のモバイルデバイス(携帯電話など)は、メールでご覧になってください。今週号は、図版の参照がありませんが、文章量が6,000字を超えているため、Web版よりもEPUB版をお奨めします。

図版データは、記事の最後に掲載されています。
データサイズが、3.22MBありますので、メルマガ専用ページのWebページ版からダウンロードしてください。
図版データには、PSD、PDF、AI(Illustrator CS3バージョン)の3つの形式が含まれます。

 


 

●EPUB版(iPhone Stanza用)のダウンロード

●EPUB版(iPad iBooks用)のダウンロード



 

今週号は、2010年7月21日号「電子書籍メディア論 I」と2010年7月28日号「電子書籍メディア論II」の続きです。

電子書籍メディア論 I

電子書籍メディア論 II

※このドキュメントは「アルファ版」です。アップデートによって内容が変更される可能性があります

 


 

ユニバーサルにつながる「本」の再構築 電子書籍メディア論 III

電子書籍メディア論 III

電子書籍メディア論の[II]のアルファ版です。このバージョンは、書籍の荒原稿に相当し、2010年8月18日号では以下の12の節を収録しています。

第1章のアルファ版

  1. 「電子書籍メディア論(仮)」を書くきっかけ
  2. 電子書籍の発展性
  3. 電子出版ビジネスと読者の利便性
  4. ニッチ市場の電子出版ビジネス
  5. 課金システムとDRMがなければWebと同じ?
  6. 日本では「携帯電話」を無視できない

第2章のアルファ版

  1. 文書の「構造」と「表示方法」を分離
  2. HTMLの普及
  3. Web黎明期は「印刷物の再現」を模索
  4. 企業のHTML独自拡張で混乱期へ突入
  5. 電子書籍と日本語の表現
  6. 電子書籍はパッケージからモバイルへ

 

●第1章のアルファ版

「電子書籍メディア論(仮)」を書くきっかけ

この本を書くきっかけは、(アップデートされず)「読めなくなった電子書籍」、(開発会社が倒産して)「買えなくなった電子書籍」が出てきたことで、特定の技術に依存して作られた電子書籍の危うさを感じたことでした。

私の仕事場の本棚には、10年前、20年前に購入した書籍がまだ収納されています。資料価値のある書籍だけ残してあるわけですが(少数ですが捨てられない思い出の本もあります)、電子書籍ではこのような長期保存が可能なのでしょうか。もちろん、デジタルデータは劣化しませんので、いつまでも保管しておくことはできると思いますが、アプリ化された電子書籍は「ソフトウェア」ですから、OSの進化にあわせてプログラムをアップデートしてもらう必要があります。前述した「イーブック・エディトリアル・ポリシー」は、電子出版の方針を示したものですが、アプリ版の場合、読者に購入してもらった後のサポートまで考えなければいけません。

 

電子書籍の発展性

5月、O’Reilly Mediaのサイトで、興味深い記事が公開されました。
サイトの[Book & Videos]>[eBooks]のページに「Books in Your Pocket」という囲みの記述があります。App Storeで販売されているアプリ版の紹介記事ですが、ここに「tips and tricks」というリンクがあります。クリックすると「Getting the Most Out of Your O'Reilly iPhone App」という記事が表示されますが、ここにアプリからEPUBのデータを取り出す方法が書いてあるのです。ちなみに、O’Reilly Mediaが提供しているアプリ版の電子書籍は、EPUBファイルとLexcycleのリーダーアプリ「Stanza」を一体化したものです。

 

実際にやってみましたが、この記事に書かれているとおり、App Storeから購入したアプリからEPUBのデータを取り出し、ZIP圧縮(と拡張子を.epubに変更)するだけで、EPUBファイルになりました。iPadのiBooksでも、AdobeのDigital Editionsでも問題なく読むことができます。また、圧縮せずに、XHTMLファイルを直接ブラウザで開いて読むことも可能です。

あり得ないことですが、もし数年後にStanzaが機能しなくなった場合、アプリ版の電子書籍は死んでしまいますが、EPUBの電子書籍として再生できるということです。さらに、あり得ない話を続けると、もしEPUBフォーマットが廃れて、ほとんど使われなくなっても、EPUBからコンテンツデータ(XHTML, CSS, PNGなど)を取り出せば、Webコンテンツとして再生できます。

 

電子出版ビジネスと読者の利便性

電子書籍が「消費」されるコンテンツとして定着するのであれば、時代とともに常に新しい技術によって作り直されていく(需要の低い本は消えていく)ということで問題ないかもしれませんが、「本棚」にずっと蒐集しておきたいという要求が高い場合はどうでしょう。

この問題は、電子書籍のクラウド化で解決するいう意見もあります。買った本はすべてクラウドに預けておき、アップデートも必要に応じて自動的にやってくれるという仕組みです。読者は、アップデートの操作やフォーマットの違いなどを意識することなく、クラウド上の本棚から本を取り出し、いつでも自由に読むことができる。さらに、iPhone, iPad, Android, PC, Macなど、さまざまなデバイスが読書端末として利用できる。今のところ、最も近いのはAmazonのKindleかもしれません。

重要なことは「DRMフリーにすればよい」という単純な話ではないことです。DRMなしで、電子出版ビジネスが可能かどうかは、現状を把握することで大まかにイメージすることができると思います。今のところ、最もベストなのはAmazonのようにDRMが使われていても、読者の利便性を損なわないように対応していくことです。Kindle Storeで買った本を「iPadで読みたい」、「Androidの新しいスレートデバイスで読みたい」、「ネットブックで読みたい」等々、読者の多様なニーズに応えることが必要ではないでしょうか。
ただし、あらゆる読者に満足してもらえる大掛かりなプラットフォームの構築は簡単なことではありません。諸条件を満たす「場」を厳選していくと、けっきょくAmazonやApple、Googleといったグローバル企業のサービスを利用することになってしまうでしょう。

 

ニッチ市場の電子出版ビジネス

あとは、コミュニティベースの小さな市場でファンクラブモデルを展開し、作品だけではなく著者のパーソナルブランドもあわせて育てていくビジネスです。この領域では、プレミアムエディションやリアルイベントなど、書籍を中心にいくつかのアイテムを複合的に動かしていきますので、読者(ファン)との深いつながりを築けるかどうかにかかってきます。

7月、エイベックスは「5日間限定24時間  Ustream倖田來未ジャック」を配信しました。これは、7月7日~11日までUstreamに24時間専門チャンネルを開設し、過去のライブやオフショットの映像を繰り返し放送するというニューシングルのプロモーション企画です。もちろん、本人が突然生中継を始めるなど、サプライズも用意されていて、視聴者を引き付ける仕組みがきちんとできています。

Ustreamのソーシャルストリームでは、本人登場を待つファンが集まり、期間限定のコミュニティが形成されていました。Ustreamの画面には繰り返し同じ映像が流れるだけですが、ソーシャルストリームではファン同士がフォローし合うなど、積極的に対話をしている。このような、ファン同士のつながりが自然と形成されていく仕組みがないと、うまくいきません。
ソーシャルネットワークサービスと連携した電子書籍が増えてきましたが、フレーズを共有して盛り上がるような「場」はなかなか生まれません。ファンクラブモデルの歴史が長い芸能マネジメントの手法を研究し、「モノ」だけではなく「事」のデザインを意識しない限り、電子書籍のネタ化やソーシャルなサービスを展開するのは難しいでしょう。

 

課金システムとDRMがなければWebと同じ?

私は、1月から電子書籍をテーマにしたPodcastを配信していますが、スタート時は電子出版に関するニュースも少なく、EPUBというキーワードを検索しても日本語の情報はほとんど出てきませんでした。状況が変わってきたのは、Appleのスレートデバイス(iPadのことです)の話題で盛り上がってきた頃。パブリッシャーが注目したのは、課金システムの確立でした。すでに、iPhone向けにアプリ版の電子書籍が売られていましたが、iPadになると「読書端末」としてアプローチしやすくなる。そして、国内の携帯電話で確立されている小額決済が、いよいよ電子書籍の新市場で本格化するという期待です。

パブリッシャーの人たちに言わせれば、電子出版とWebの違いは、「課金システムとDRM」しかないと。「ユーザフレンドリーな小額決済もできず、DRMもないなら、Webでやった方が100倍良い」という考えです。セルフパブリッシングの分野には当てはまらないかもしれませんが、電子出版ビジネスを10年近く手掛けてきた人にとって、Webとの融合はビジネスの「リセット」に近いことなのかもしれません。

 

日本では「携帯電話」を無視できない

電車に乗ると、携帯電話のディスプレイを見つめながら、キーを打ち込んでいる人たちをたくさん見かけます。最近は、iPhoneなどのスマートフォンも増えてきました。現在、子どもから年配の方々まで、あらゆる人が所有している「読書端末になり得るデバイス」は、携帯電話しかありません。iPadのようなスレートデバイスやKindleのような読書専用端末を対象にした電子書籍には新しい可能性がありますが、すでに身近な読書端末になっている携帯電話を無視することはできません。

 

これは、携帯電話向け電子書籍市場に参入しなければいけない、という話ではなく、携帯サイトやミクシィ、Twitterモバイルとの連動、書籍情報への動線づくりなども視野に入れて新市場を活性化させる必要があるのではないかということです。具体的には、第9章で解説したいと思います。

注釈:
日本の場合は「コミック」が大半を占めており、その他の文芸・総合の電子書籍がどのくらい拡大できるか注視しなければいけません。スマートフォンやスレートデバイスなどを対象とした新市場(約6億円)が、コミック以外の分野で伸びていく可能性もありますが、市場が大きくなるのにまだまだ時間がかかりそうです。

 

 

●第2章のアルファ版

文書の「構造」と「表示方法」を分離

「電子書籍メディア論 I」では、電子書籍を定義する要素として「構造化」、「メタデータ」、「ID」を挙げました。これは「文字主体の書籍」を対象としていますので、ビジュアルが多く複雑なレイアウトを持つ雑誌や漫画などの電子化については、他の章で解説しています。電子書籍の「構造化」については、まず、大まかに「文書の構造化」の歴史について解説しておきたいと思います。始まりは今から40年以上前です。1969年、IBMの研究者であるチャールズ・ゴールドファーブ、エドワード・モシャー、レイモンド・ローリーらは、GML(Generalized Markup Language)というマークアップ言語を開発しました。GMLの画期的なことは文書の「構造」と「表示方法」を完全に分離して、汎用的なタグ付けを可能にしたことです。

 

 

※このページは「2010年8月18日号」のサンプル版です

 

 


発行者:境祐司(さかいゆうじ)Youji Sakai
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