Adobe Museとアクセシビリティ

Museアカデミー/Creative Edge School Books


質問内容:


解答:



昨日(2015年11月11日)、六本木の東京ミッドタウンホールで開催された「Adobe Live 2015 Best of MAX」にて、これからリリースされる新しいMuseのデモンストレーションを行いましたが、その後、参加された方々から、アクセシビリティに関する質問を頂きましたので、情報を共有できるように掲載したいと思います。

まず、「Museで作成したウェブページはアクセシブルですか?」については「イエス」です。下図は、Museの編集画面ですが、Adobe Illustratorで作図するようにマウスドラッグの操作だけで作成されています。


Adobe Museの編集画面である。この画面でデスクトップ用、スマートフォン用などのページを作り分ける。


現在のMuseは、ワイドスクリーンの大きな画面で見やすいページと、縦長の小さな画面(スマートフォンなど)で見やすいページをそれぞれ作成して、マルチデバイスに対応させています。例えば、スマートフォンでアクセスすると、小さな画面用のページが自動的に表示される仕組みになっています。
※昨日のセッションで紹介した近々リリースされる新しいMuseでは、この作り分けが不要になりました。


Museで作成したウェブページをブラウザで表示した結果。スマートフォンでアクセスするとモバイル用のページが表示される。


Museで作成したウェブページをアクセシビリティツールを使って、CSSを外したり、リニアライズ(線形化)してみます。下図のように、文書構造を壊すことなく、表示されます。また、音声読み上げツールでページを音声で伝えることもできます。

ただし、前述したとおり、ウェブアクセシビリティについての知識の有無で、変わってきます。例えば、見出しの設定をしていなければ、タイトルも(HTMLでは)段落として記述されてしまいます。つまり、作成者が文書構造を意識しながら、デザインしなければ、”なんちゃってHTML”を生成させてしまう可能性があります。これは、Museの問題というより、つくり方の問題です。
Museで適切なマークアップをするための学習は、昨年の講座(6時間で学ぶ Muse完全習得)で詳しく解説していますので、ご覧になってください。



昨日のセッションは、新しいMuseの使い方を解説することに絞り、Museの開発思想についての話題は省きましたが、ラリー・テスラーの「テスラーの複雑性保存の法則(Tesler's Law of Conservation of Complexity)」を取り上げています(スライドには情報が入っています)。
※ラリー・テスラーは、ゼロックスのパロアルト研究所で働いていたとき、スティーブ・ジョブズと出会い、その後、Apple Computer(現Apple)で副社長として数々のプロジェクトをこなしていた方です。


「テスラーの複雑性保存の法則」


「人とのインタラクションをより簡潔にすると、背後にある潜在的な複雑さが増大する」。システムの一部を簡単にすると、そのほかの部分がより複雑になっていくという主張です。
※ドナルド・アーサー・ノーマン著作の「「複雑さと共に暮らす」デザインの挑戦」から引用。



Museは、Adobe製品の中でも驚くほど「機能が少ない」ツールです。ウェブデザイナー向けではない特殊なマーケットを開拓しなければいけないため、必要最小限の機能しか搭載していない製品をリリースし、初期ユーザーのフィードバックを得ながら、小さく、こまめにアップデートを繰り返してきたツールです。

Museプロジェクトは、「ウェブに詳しい人がいない、予算がない」等で、PDFリンクだけで済ませていた中小企業などに対して「ウェブ活用を身近なものに」を実現できるように、自動化を徹底しています。利用者にとって「簡単」ということは、Muse内部は「複雑」になっているということです。
下図のように、タイトル一つ入力しただけでも、Museは大量のスクリプトをHTMLに記述します。


Museでタイトルを入力する。ページにはタイトル一つしか配置されていない。


Museが生成するHTMLには、大量のスクリプトが記述されますが、これはエンタープライズCMSや企業向けのカスタムシステムなどから発行されるウェブページと同レベルと考えてよいと思います。もし、ソースコードを見て、もっと軽くしてほしい、と要望するクライアントのプロジェクトなら、Museを使うべきか再考する必要があります。

海外の事例を見ても、エンタープライズCMSのように割り切って活用しているプロジェクトは成功していますが、例えば「Dreamweaverより「簡単だから」という理由でMuseを使い」、Museから書き出したHTMLを再利用しようとしたプロジェクトは、コスト高などで、あまりうまくいっていません。Museは、「ウェブ活用を身近なものに」を実現するためのツールであり、仕事にどれだけ役立てられるかが重要になります。

そして、最も大切なことは、Museが生成するページに問題があったら、開発チームに伝えることです。Museのようなリーン/アジャイル式に、小さくアップデートしている製品は、利用者からのフィードバックが強く影響します。





更新日:2015年11月12日(木)/投稿日:2015年11月11日(水)

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