THINK ZERO MAGAZINE

Creative Edge School Books


スマホコミック「ZEROROBOTICS」のストーリー構造(2015年11月7日)

11月も1週間経ってしまいましたね。毎年のことですが、11月入ってからは時間の流れもスピードアップし、大晦日まであっという間です。長期プロジェクトは、1日1日の積み重ね。コンテキストズームシートを使って俯瞰しながら調整の日々です。

2016年1月末リリース予定の長期プロジェクト「ZEROROBOTICS」(医療とロボティクスをテーマにしたスマホコミック)は、エンターテインメント作品ですが、認知症の問題を扱った重いストーリー。中学生、高校生でも楽しめるように、派手なアクションも含みますが、総じてシリアスな展開になりますので、全体のバランスを見ながら調整しています。ティーザーページで公開している大まかな粗筋は以下のとおりです。



2040年、日本の平均寿命は女性が100歳となり、OECD加盟国で28年連続世界トップ。男性も90歳を超え、定年退職後のセカンドライフ「30年」時代に突入。
世界の認知症患者数は1億人を突破し、その莫大な社会的費用(医療費、介護費、インフォーマルケアコスト)は数十兆円に上り、長寿国共通の大きな問題になっていた。


フリーのデザイナーとして働いていた鈴木一郎は、母の認知症がきっかけでロボットベンチャーを立ち上げ、認知症ケア対応ヒューマノイドロボット「ZERO」の開発に取り組むが、自身もMCI(軽度認知機能障害)と診断され、人間の尊厳に関わる越えられない壁があることを知る。


世界では、致死性自律型ロボット(LARs:Lethal Autonomous Robotics)に関する国際人道法上の議論が活発化する中、ダーパ(DARPA:米国防総省・国防高等研究計画局)が開発した軍用高速四足走行ロボットが実証実験中に暴走、市街地に逃亡するという事故が発生していた。




スマホコミック
            「ZEROROBOTICS」のスクリーンショット

ストーリーは三層になっていて、長寿国が抱える認知症問題(国際問題)、MCI(軽度認知機能障害)と診断された主人公の苦悩(誤解と差別)、加速する軍事用ロボット開発(新たな脅威)の3つのエピソードが複雑に絡み合いながら話が進みます。


スケールは大きいのですが、認知症は、思っている以上に「身近な問題」です。今後、間違いなく自分が住んでいる地域の問題になっていきます。一例を示したいと思います。認知症が発症し、進行すると、日常生活の中の「買い物」などでも支障をきたすような症状が出てきます。

たとえば、毎日、同じものを買いに来るようになったり、小銭が払えなくなり小額でも1万円札を出してしまうなど、店員さんも何かおかしい、と感じ始めます。でも、「お財布に100円玉入ってますよ」などと言ってはいけない。お金の大きさがわかりませんので動揺するだけです。「ありがとうございます」と言ってお釣りとレシートを「やさしく」渡す。症状が進むと、見当識が極度に低下していきますので、お金を払わず店を出てしまうことがありますが、ここでも驚かすような行為は避けなくてはいけません。


地域で情報共有し、「見守り」の考え方を一人ひとりが理解しておかないと、頻繁にトラブルが発生します。地域の中には、「迷惑だから、そういう人を外に出すな」と思う人もいるでしょう。家族は、街に出てそういう空気を感じると、耐えられなくなります。でも、「外に出すとトラブルになるから、家から出さないようにしよう」などと思ってしまうと、症状をさらに進行させてしまうので注意が必要です。病院でも同様なんです。尊厳を考えないケアに対しては「人間のための獣医になるな」と言っています。


認知症のコンテンツを買っていただいた方から「認知症の人を愛すること〜曖昧な喪失と悲しみに立ち向かうために」という本を紹介していただきました。


「そこに実在はするが、以前のその人ではなくなってしまう」


著者のポーリン・ボスが、強調していたのは「介護者はもっと自分の心に、健康に気遣いなさい」ということ。家族だけではなく、地域で見守ることが今後より重要になってきます。現在、全国の自治体が「見守り」のための仕組みづくりを始めていますが、とても時間のかかること。教育の領域(学校)でも、そろそろ扱ってよいのではないかと強く感じています。

世界レベルから、国内の地域レベルまでさまざまなレイヤーで起こる認知症問題、長期プロジェクト「ZEROROBOTICS」で、多くの人に伝えたいと思っています。



投稿日:2015年11月7日(土)




今日の一言:2015年11月7日(土)

快晴、朝6時の気温14.5度(東京)。
明日から雨の日が続くので、今日くらいは太陽を浴びておきたいのですが、残念ながら無理そう。今朝のPodcast(iTunes link)は、「社会の内側からは見えないアンダークラスとグローバル時代の巻き添え被害〜ジグムント・バウマンのコラテラル・ダメージ」と題して、バウマンの本を取り上げました。
Podcastでは話しませんでしたが、日本はOECD加盟国の中で4番目に相対的貧困率が高いのです(貧困ラインを下回る125万円以下で生活している人が6人に1人)。絶対的貧困とは分けて見なければいけませんが。音声の後半、例としてイオングループの都市型小規模スーパー「まいばすけっと」を出しましたけど、66円でおにぎりが買えるというのはほんとに有難いことで。時間があれば是非、バウマンの本を読んでみてほしいと思います。



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