THINK ZERO MAGAZINE

Creative Edge School Books


出版社として「読者のスキーマ」についてを考える(2015年11月8日)

出版社が「読者のスキーマ」についてを考えることはとても重要です。スキーマというのは「既有知識」のことで、たとえば、読者が「雨が降ってきた」という文を見たとき、頭に中では「濡れる」とか、「傘が必要」といった連想をしながら、表現を補完していきます。私たちは、このように無意識的にイメージを連想することで(スキーマを持つことで)、映画やドラマ、小説などを楽しむことができます。

スキーマは、子ども頃からの体験をもとに形成されていきます。幼児は、公園で遊んだり、絵本を読んだり、動物園で人間以外の生きものを見たり、さまざまな場所で、さまざまな体験を通して、暗黙のうちに知識を取り込んでいきますが、育つ環境が異なりますので、どうしても「体験の多い子ども」と「体験の少ない子ども」に分かれていきます。


映画鑑賞などは、豊富な過去体験を持つ人、持っていない人が混在しますので、「感動した、面白かった」「つまらない、ひどい映画だった」など、感想が極端に分かれることがあります。当然ですが、映画のストーリーが観客のスキーマより劣っていれば、「可もなく不可もなし」「つまらない」となりますが、スキーマを超えていれば、感動します。どう感じるかは映画を鑑賞する人のスキーマで変わってくるわけです。

よく作品に対して事細かに批判をしている人がいますが、その人のブログを見ると、映画好きで、読書好き、旅行も大好きという、膨大な体験をお持ちの方で、この方のスキーマを超えるのは至難の技だな、と感じました。でも、こういう方々の情報発信力は強いので、多くの人にとってはそこそこ「面白い」映画でも、ネットでは「つまらない」映画として拡散していくことがありますので悩ましいですね。


報道番組などもイメージしやすい例です。視聴者のスキーマを意識していない番組は、事実だけ羅列していることが多いため、頭にスッと入ってきません。再現映像やテロップを駆使し、視聴者のスキーマを活性化させる工夫をしている場合は、わかりやすい報道番組になります(報道バラエティーほど意識しています)。キャスターやコメンテーターも重要な役割を果たします。逆に、このスキーマを利用して、対象者をフィルタリングしている例もあるのですが。

池上彰さんの番組などは、週刊こどもニュース(1994〜2010年)の頃から、難解な問題を身近なモノゴトを例に出しながら、わかりやすく解説することに長けていました。こどもニュースは今見ても参考になります(NHKアーカイブスで視聴可能)。「面白かった」「えっ、そうだったんだ」「いい話だ」と感じているとき、脳ではドーパミンが分泌されています。ドーパミンが分泌しやすいのは、たとえば「新しい発見があり」「満足を得られ」「その後も続けられる」ものです。わかりやすいのが「ネット検索」。ネット検索していて、自分の知らないことが次々と見つかり、夢中になったことはありませんか?


この「新しい」「満足」「継続」を満たす商品、製品、サービスは、受け入れてもらいやすいのです。出版であれば、「習得本」などですね。一人出版社が、個人レベルのコンテンツビジネスで成功できたのも、この「習得本」に絞ったことが大きな要因です。


スマホコミック
            「ZEROROBOTICS」のスクリーンショット



投稿日:2015年11月8日(日)




今日の一言:2015年11月8日(日)

雨、朝6時の気温14.8度(東京)。
雨は、夜まで降り続くようですね。空気が潤いますので個人的には悪くない雨です。今日のPodcastは、夕方頃に配信予定です。一昨日書いたとおり、私のPodcastは、打ち合わせ前の20分、駅までの15分など、日常の細切れの時間を使い、歩きながら(電話をするように)録ってますので「雨の日」に弱い。傘とカバンでiPhoneが持てないという単純な理由ですが。「今日は雨か、Podcastの収録はやめよう」くらいの臨機応変さでやってきたので、900回近くも続けられたのでしょう(今日の夕方の配信で895回目になります)。iTunesとMP3で配信してますが、iTunes経由で聴いていただいている方が多い感じです。
海外では尖ったテック系のPodcastがまた増えてきましたね。Podcastは、2005年に登場し、すでに10年経ちますが、日本では(2004年にタナカカツキさんが始めて全国に広まった)「デジオ」という音声メディアがありました。私のPodcastはどちらかといえば、デジオの系統です。



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