THINK ZERO MAGAZINE

Creative Edge School Books


Flashが殺されずに現役のまま進化していたら(2015年11月12日)

先月のロスアンゼルスで開催されたAdobe MAX以降、新しいMuseについての問い合わせをたくさん頂いています。ただ、一昨日のAdobe Live 2015で、開発中のMuseをデモンストレーションできたのは一日限りの特別処置で、リリースされるまでは一切公言できないのです。「近々出ると思いますので、ご期待ください」としか言えませんが、ほんとに期待してほしいと思います。

Museが本国のMAXで大々的に取り上げられるとは夢にも思いませんでしたが、もう一つエバンジェライズしていた製品があります。「Edge Animate」です。Museと同様に、HTMLやCSS、JSの知識なしでHTMLアニメーションやインタラクティブなデジタルコンテンツを作成できるツールですが、Museと違って、スクリプトが使えますので、上級者がコーディングで作っていくことも可能です。


実は、Museは(ユーザー不在のまま)マイナーなまま消え去り、Edge AnimateはFlashを代替するメジャー製品に育っていくのでないかと考えていたのですが、Museの方がじわじわとユーザーを増やしつつあります。DOMベースからCSS AnimationやHTML Canvasに移行するのではないかと期待していましたが、Edge Animateのプロダクトマネージャーであり、エバンジェリストとして知られているサラ・ハントさんも、2014年に入ってから情報発信がなくなって、先月のMAXではProject Cometを紹介していましたので(つまりCometのプロダクトマネージャーになっていた)、今後がちょっと心配ですね。


Edge Animateの編集画面のスクリーンショット


Edge Animateを積極的にフォローし始めるきっかけは、デザイン学校の先生たちからの強い要望があったからです。「Flashの代わりになるツールはないか」という話が複数の学校からあって、2013年の段階では、Edge Animateが最も有力だったので、検証をして、カリキュラムも作りました。ビジネスの領域でFlashが沈んでしまっても、教育ではクリエイティブツールとしての需要は高く、先生たちも頭を悩ませていたわけです。


こんなことがありました。学生たちが、「こういう作品が作りたい」と言って、ウェブサイトのURLを送ってきたのですが、すべてFlashで作られた動的な表現のページでした。ただ、「今からFlashを学ばせるより、HTML5やJSで作らせた方がよいかもしれない」という担当の先生の判断で、1年間コーディングでつくる授業をやっていたのですが、出来上がってくる作品は今一つ。ユニークな感覚の学生が多かったのですが、HTML5のサンプル作品のようなものばかり。

そこで、「試しにFlashも使わせてみましょう」となり、数ヶ月やらせてみたら、次々と面白い作品が出てきた。「やっぱり、オーサリングツールがないとだめか」と理解したわけですが、先生としては来年のカリキュラムに、モバイルで使えないFlashを入れることはできない。「さぁ、困った」ということで、前述した「じゃ、Edge Animateはどうだろう」という展開につながっていきます。


商用ウェブの世界では、Flashコンテンツがユーザビリティを低下させるなど、過剰な表現だと感じる人が多かったかもしれませんが、デザイン教育、アートの領域では、こんな優れたクリエイティブツールはない、という解釈。ですから、Flashは、企業戦争で殺された悲運のテクノロジーと捉えられています。


最終的には、HTML5でもJSでも良いのですが、Flashライクなツールが未だ登場していない。もし、Flashが殺されずに現役のまま進化していたら、IoT対応となり、スクリーンで完結するコンテンツ制作だけでなく、ハードウェアを制御するような作品づくりが身近になっていたかもしれません。今、デザイン学校でやりたいのは、そういう授業なのです。仕事に就くための(就職のための)技能習得だけではないため、商業の世界とは異なるもう一つの世界があることを知ってほしいと思っています。



投稿日:2015年11月12日(木)




今日の一言:2015年11月12日(木)

曇り、朝6時の気温12.4度(東京)。
まだ総括するには早いのですが、今年を振り返りつつ、2016年前半の準備に入っています。昨年(2014年)一年間はまったく余裕も余力もなく、ほとんど記憶がありません。一日一日が必死で、ありとあらゆることを毎日試していたような気がします。
今年は、一歩づつ確実に階段を上がってきた感じです。ただし、2014年を「3階から転落した年」とするなら、今年は「15階から転落した年」くらいの違いがあり、地獄度で言えば、昨年の5倍危険なデスロードを走っています(現在進行形)。昨年、辛いと思っていたことも今は何てことはない。思考法が変わるだけで、ずいぶん楽になりますね。昨年の転落経験がなければ、ここまで到達できなかったわけですから、まさに「実践は理論に勝る」です。



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