バリアフリー出版とエバンジェリストの重要性（2015年11月29日）
2000年に、バリアフリー資料リソースセンターの松井進さんが提唱した「バリアフリー出版」は、本の出版にあわせて、可能限りはやく、大活字図書、マルチメディアデイジー図書、録音図書、点字図書を発行するための取り組み。
音訳サービスJなどの複数のバリアフリー系出版社とプロジェクトを進め、2001年に発行された松井さんの著書「二人五脚」で、最初の同時出版を実現させました。
2007年には、「Q&A 盲導犬 ともに暮らし、ともに歩き、広がる社会」（明石書店／1,470円）の「UD（ユニバーサルデザイン）出版」を実現し、点訳版、朗読テープとオーディオCD、マルチメディアDAISYを含む音訳版、テキストデータ版とPDF版、大活字版、電子書籍版、携帯電話版、オーディオブック版などを7社の協力でリリースしています。
2011年に開催された国際電子出版EXPOでの講演「視覚障がい者とインターネット」が、YouTubeで公開されていますので、ぜひご覧になってください。この年、7冊目の著書「盲導犬の訓練ってどうするの？ -視覚障害当事者の歩行訓練体験記」を出版されています。
バリアフリー出版、UD出版は、とても意義のある取り組みで、こういった「不可能を可能にする」挑戦は、業界に刺激を与えてくれます。ただ、採算性の問題で継続していくのが大変。「二人五脚」では、1,500円の原本に対して、大活字版が9,000円、点字版が15,000円、音訳版13,500円です。視覚障害者だけでなく、高齢で目の不自由な人、手の不自由な人、寝たきりの人、入院患者、そして健常者のコンテキストの中からニーズを見つけ出し、さまざまな人たちに役立つ「同時解決」のサービスを作り出す必要があります。
私も出版社の立ち上げ準備をしているときに、電子書籍、オーディオブック、ウェブキャストの同時リリースを計画していました。ブログには、当時のプランに関する情報が残っていますが、チーム体制なら十分可能なものです。一人出版社の現在の体力で、これをやるのは難しいですが、1つのコンテンツを複数のメディアで展開していくスキームは、長期プロジェクトのサブコンテンツマッピングに継承されています。
「そんなことは無理だろう」とか「非現実的だ」などと言われるような挑戦的な取り組みは、たとえ無謀なことであっても、たくさんの人を巻き込むことができれば、業界のカンフル剤になり得ます。ただ、今まで何度も書いてきたとおり、「多様性」が重要で、業界の中だけでは限界があるのです。他の業界、他分野からどれだけ多くの人が入ってくるかで成否が決まる。
11月23日の「芸能界における所ジョージさんのポジションは私たちにとっても理想」で取り上げたガイ・カワサキさんの言葉「革命の最初の90%は、商品を生み出すこと。次の段階の90%は、それを伝道（エバンジェライズ）すること」で、「初期には「売上」ではなく、「エバンジェリスト」が不可欠だ」でわかるように、伝道（エバンジェライズ）が行われないと、業界の外には伝わりません。エバンジェリスト、伝道師の存在がいかに大きいか。
投稿日：2015年11月29日（日）
今日の一言：2015年11月29日（日）
晴れ、朝6時の気温6.5度（東京）。
2015年の平日は、あと「19日（＋土日祝の9日）」。コードゼロ、プランBでなんとか回避できそう。多分、大丈夫でしょう。ただ、プランBというのは端的に言えば「先送り（一時凌ぎ）」なので、12月のコードゼロ発動は100%なのです。もう、回避することは困難。一人出版社の業態を変えるしかありません。長期プロジェクトに移行してから、法人向けコンテンツを主体にするなど、仕事の内容を変えてきているのですが、もっとダイナミックに変えないとだめです。本来なら、10月には長期プロジェクトに集中できる環境ができていないといけないのですが、現在、以前の一人出版社の仕事（まだリリースできていないコンテンツ）をまだやっているという状況。コードゼロ発動を引き金にして、一気にチェンジするしかないと判断しました。「一か八か」です。ビジネスモデルはうまく機能していますが、「一人」の限界をすでに超えていますので、その歪がこうやって出てくる。
でも、どうして一人でここまでやってこれたのか、説明できないんですよね。今年の初めの経営者会議で、百戦錬磨の経営者の皆さんには「それは大きな企業がやる仕事、夏までもたない、失敗で学べ」と言われていたのですが、しぶとく生き残っています。