THINK ZERO MAGAZINE

Creative Edge School Books


Museをアグレッシブに啓蒙していく(2015年12月9日)

師走のこのスピード感、毎年のことですが「速い」。あっという間にクリスマス、大晦日です。大晦日は、(先月、禁じ手のプランBを使ったので)コードゼロが発動してしまいますが、幸か不幸か、誰にも迷惑をかけることはないと思います。大晦日ですから。ひっそりと旧・一人出版社が消滅します。是が非でも、新生・一人出版社に完全移行しないと、やっと育ち始めた新しい一人出版社も一緒に消滅、というバッドエンド。資金調達が、一気に解決する早道ですが、最も実現可能性の低い選択肢なので、残された時間、現実を見つめながら地道にやっていきます。


先日、11月2日のPodcast「競争相手のいない新しい市場を「今やっている仕事の領域」から見つけ出そう〜脱セグメンテーションの考え方」(iTunes Link)で紹介したW・チャン・キム、レネ・モボルニュ両教授の「新規市場の創造を妨げる6つの思い込み レッド・オーシャンの罠」について、意見交換する機会があったのですが、「市場創造戦略とニッチ戦略を混同するな」というのは重要だなぁ、とあらためて考え込んでしまいました。
※Podcastで取り上げたのは「Harvard Business Review(2015年10月号)」の特集「ブルー・オーシャン戦略のすべて」です。


今、ちょうどAdobe製品のMuseとDreamweaverのコンテンツを同時に進めているので、プロダクトのセグメンテーションについて考えています。Dreamweaverはウェブ製品で、対象はウェブデザイナー。一方、Museは製品ページに書かれているとおり、グラフィックデザイナーなど紙媒体のデザイナーが対象。InDesignの開発チームが中心となってつくられたデザイン製品です。先月登壇したAdobe Liveでも、ウェブではなくDTPのセッションでMuseのプレゼンテーションをしました。


DreamweaverとMuseの対象者を示した図


ところが、米国で開催されたAdobe MAXでは、Dreamwaeverと一緒にウェブ製品として紹介されていたんですね。ご存知のとおり、レスポンシブWebデザインのページをドラッグで作成できる機能が搭載されました。ウェブ製品ではないので、ウェブ界隈ではほとんど話題にならなかったMuseですが、USのウェブ関連コミュニティでは、「これ、最高のプロトタイピングツールじゃない?」とずいぶん期待されている。現在の「Photoshopで作成した静的カンプから、可変幅のデザインに補完しながら仕上げていく」プロセスに対して、「ほんとにこのやり方しかないのか?」と感じていた人が多かったということでしょう。


Photoshopと同じようにマウスドラッグで、レスポンシブデザインのページを作成できてしまうMuseをプロトタイピングツールとして使えば、カンプを作成するデザイナーが可変幅を意識しながら、さまざまなスクリーンに適応するページをデザインすることができます。これからは、ビジュアルデザインを担うデザイナーも可変幅で考えるスキルが必要になりますし、ウェブデザイナーとのやり取りが飛躍的に効率化されるはずです。まぁ、実際はプロトタイピングツールとして開発されたわけではないので、直ちにワークフローに組み込むというのは無理があるのですが。


Photoshopを製品価値という視点で見ていくと、(画像処理ソフトではあるけれど)ウェブツールとしても魅力的でなくてはいけませんよね。Photoshopの製品ページを見ても、「アプリやレスポンシブWebデザインのカンプを作成するときに最適なアートボードを搭載」とフィーチャーされているように、新バージョンの「売り」にもなっています。ただ、Museがプロトタイピングツールとしても十分使える製品に進化したり、Cometのようなプロトタイピングの専用ツールが出てくると、今のやり方は、やっぱり変わっていくのだと思います。


わかりづらい製品だったMuseが、よりわかりずらくなることを心配しつつ、この際だから、Dreamweaverとはまったく異なる(再構築主義に基づく)市場創造戦略を考えてみたいですね。現在のMuseは、すでに競争相手の存在しない新しい市場(スイートスポット)のど真ん中にはいるのですが、規模が小さすぎる。
もっと、アグレッシブに啓蒙していきたいなと思っています。



投稿日:2015年12月9日(水)




今日の一言:2015年12月9日(水)

晴れ、朝6時の気温3.6度(東京)。
2015年の平日は、あと「11日(+土日祝の7日)」。12月の9日目です。今日は、旧・一人出版社の仕事は中断し、新生・一人出版社の仕事。
他の出版社とのコラボも2件進行していますので、全体構成の確認など。9月25日に発売した、300点のサイトを掲載した「Webデザインの見本帳 実例で学ぶ最新のスタイルとセオリー」は評判もよく、引き続き、デザイナー向けのインスピレーション本として、プロモーション中です。サイトのデザインで煮詰まっているデザイナーさんは、書店に行ってパラパラとページをめくってみてください。何かヒントが得られるかもしれません。
以前、イベントで、この本の活用方法を紹介しました。あくまで「使う本(ユーティリティーブック)」という前提で、ページをバラして、参考になりそうなページを大きなテーブル並べます。全体を一覧しながら、意見交換するというものです。メンバー全員が同時に同じページを「見て」「付箋を貼ったり」テーブルの上で自由に「動かせる」環境が重要なので、バラす必要があるのです。「読む本」だと、本を壊すという罪悪感にかられてしまいますが、ユーティリティーブックというのは「活用できる」ことが価値ですから、ページを切り離したり、書き込んだり、角を折ったり、自由に使ってよいと思います。電子書籍では不可能なので、紙の束であることの利点の一つ。
ただ、10年後は、テーブル全体がディスプレイになり、電子書籍のページをバラして、同じことができるようになっているかもしれませんね。



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