Timeline thinking 2010

Realtime Magazine - High-Speed Publishing

The Future of Reading

メールマガジンのサンプルバージョン(エピソード1のみ)

電子書籍メディア論・週刊イーブックストラテジー
新時代のデジタルパブリッシングとソーシャルメディアで変わる「読書革命」


 

 


 

●2010年5月5日号について

今週号は、Podcastでは配信していない内容です。「EPUBフォーマットの電子書籍、レイアウト表現は可能か?」がテーマになっています。少々、専門的な部分がありますが、(連休中ということで)一度整理しておきたいと思っていました。
文字数が7,000字近くになってしまいましたので、HTML版も用意しています。メーラーで読みにくい場合は、ご利用ください。上記のメルマガ専用ページに掲載しています。EPUBフォーマットにも変換していますので、こちらも試してみてください。

 


 

特集:
EPUBフォーマットの電子書籍
レイアウト表現は可能か?

  1. EPUBとXHTMLの関係
  2. HTML5とXHTMLの違い
  3. HTML5とEPUBでユニバーサルな電子書籍を
  4. モバイルデバイスの電子ブックリーダーは「WebKit」
  5. 読書専用端末は「Adobe Reader Mobile SDK(RMSDK)」
  6. DRMフリーの電子書籍でもビジネスが成立する市場
  7. 「文字主体」の電子書籍とその他に分ける
  8. EPUBとマークアップ
  9. 10年経っても読める電子書籍と買い換えが必要な電子書籍
  10. アプリ版の電子書籍はアップデートしてくれないと、いずれ読めなくなる
  11. EPUBでレイアウト表現は可能か?
  12. リフロー処理を活かしたレイアウト表現

 

DRMフリーの電子書籍でもビジネスが成立する市場

AmazonやBarnes & Noble 、Sonyなどのメガプラットフォーム以外で、EPUBフォーマットの電子書籍を読者に提供する方法は2つ。ひとつは、O'Reilly Mediaのように、DRMフリーのEPUBファイルを販売して、Stanzaなどの無償利用できるリーダーで読んでもらう方法。もう一つは、リーダーのエンジンとコンテンツ(EPUBフォーマットの電子書籍)を一体化し、アプリ版として提供する方法だ。O'Reilly Mediaは、Stanzaのエンジンを使ってアプリ化し、App Storeで販売している。

日本の場合、(コミック以外は)まだ目新しさと話題性で売れている電子書籍が大半なので、市場が大きくなったときに、どう変化しているのか想像しにくい。そもそも、国内ではEPUBフォーマットの電子書籍がほとんど流通に乗っていない(フリーの電子書籍は増えている)。現実的には、ボイジャーのT-Time touchを採用するか、独自にリーダーを開発するという選択になりそうだ。

流れが変わるとすれば、Ibis Readerのようなブラウザ上で稼働するリーダーが増え、DRMの技術と組み合わせることが可能になったときではないだろうか。読者の利便性を高め、出版側が安心して取り組める仕組みのバランスが鍵になる。

ただし、あまり時間をかけていると、インディペンデントのパブリッシャーが、着々とソーシャルメディア・プレゼンスを確立し、DRMフリーの電子書籍でも十分成立するマーケットを開拓する可能性がある。著者や編集者がソーシャルネットワークで活動しながら読者と対話し、露骨なプロモーションを仕掛けなくても、効果的に伝播していく新しいプラットフォームの芽はすでに見えつつある。

 

アプリ版の電子書籍はアップデートしてくれないと、いずれ読めなくなる

アプリケーションソフトウェアとして開発された電子書籍は、定期的にアップデートしていく必要がある。App Storeで購入したアプリ版の電子書籍は、iPhone OSのアップデートに合わせて、プログラムを修正しなくてはならない。もし、開発企業が作業を中断してしまうと、いずれ読めなくなってしまうだろう(すでに開発者がアップデートを断念し、消滅寸前のアプリが多数ある)。

アプリ版の電子書籍は、私たちがパソコンで使っているアプリケーションソフトやゲームソフトに近い。そう考えれば、読みたいときに購入し、必要なくなれば削除(アンインストール)すればよい。最新の技術やマルチメディアを取り込み、娯楽性を高めた電子書籍には適している。

EPUBフォーマットの電子書籍に、マルチメディアの要素を組み込んだり、インタラクティブ性を持たせるには、仕様を拡張しなければいけないため、かなり時間がかかる。もし、近々リリースしたいのなら、EPUB(と対応リーダー)で試行錯誤するよりも、アプリ版として開発したほうがはやい。

 

EPUBでレイアウト表現は可能か?

EPUBフォーマットの電子書籍は、コンテンツ部をXHTMLでマークアップし、ページの視覚表現はCSS(スタイルシート)で指定しているが、Webデザインのような高度なページレイアウトはできない。XHTMLのサブセットであることを忘れてはならない。さらに重要なのは、プレゼンテーションコントロールの優先順位が「読者 > デザイナー」となっていることだ。

デザイナーが意図したとおりに表現できるスタイルは限られており、視認性や可読性に影響する指定については、リーダーのデフォルトスタイルに負けてしまう(結果的に、無茶なデザインはできないようになっている)。読者がリーダーの機能を使って、自由に文字サイズを変更したり、マージンを調整することができるため、Webデザインのような詳細な指定はあまり意味がない。

Webデザインでは、段組みレイアウトを表現する場合、floatプロパティでボックスを浮動化し(左右どちらかに寄せ)、幅を固定することで「疑似的」に段組みをつくっている。このようなレンダリング処理は、現在のリーダーでは難しいため、雑誌のようなレイアウト表現には適していない。

 

リフロー処理を活かしたレイアウト表現

Webデザインで実現している(紙媒体に近い)レイアウト表現は難しいが、Adobe Digital Editionsのようにリフロー処理を活かした段組みは大きなディスプレイで閲覧するときに有効である。Digital Editionsには拡張されたレイアウトの仕様が実装されている。EPUBの電子書籍を開き、文字を小さくしてから、ウィンドウの幅を広げてみよう。幅が広がると、一行の文字数が多くなるが、可読性が低下しないように、ページが2段組み、3段組みと自動的に切り替わっていく。

デフォルトでは、幅が61.5em以上で2段組み、93em以上 になると3段組みに自動調整される。デザイナーは、この仕組みを「XPGT(XML Page Template)」でコントロールすることができる。OEBPSフォルダに「template.xpgt」というファイルを追加すればよい。

 

 

※以下、サンプルのため省略

 

 


 

発行者:境祐司(さかいゆうじ)Youji Sakai
メルマガ専用サイト: http://design-zero.tv/2010/ebook.html
メール: office@admn.net

 


付録について:

 


エディトリアル・エンジニアリング プロダクションノート

エディトリアル・エンジニアリング プロダクションノート

 


 

このページは、境祐司が運営するPodcastのテキスト版(有料メールマガジン)に関する内容を掲載しています

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