Timeline thinking 2010

Realtime Magazine - High-Speed Publishing

The Future of Reading

メールマガジンのサンプルバージョン(エピソード1のみ)

電子書籍メディア論・週刊イーブックストラテジー
新時代のデジタルパブリッシングとソーシャルメディアで変わる「読書革命」


 

 


●付録について:
毎号、配信されるメールマガジンの内容の一部をePubフォーマットに変換し、付録として提供しています。
今週は、特別版をePubに変換しました。以下のURLをStanzaに登録して、ダウンロードしてください。

ダウンロード方法の詳細については以下のページを参照してください。


 

EPISODE 1

 

ePubフォーマットの電子書籍を発行する
「メルマガで配信している電子書籍のプロセスを公開」

ePubの表記について:
Podcastのタイトルや本文、グラフィックでは「ePub」と記述していますが、メールマガジンの記事では(仕様書の表記と同じ)「EPUB」で統一しています。

EPUBは事実上の国際標準規格へ

EPUBは、IDPF(International Digital Publishing Forum)という米国(ニューヨーク州)の標準化団体が策定しているオープンな電子書籍フォーマットである。業界標準として推進されているが、すでにGoogleやAppleが正式採用し、Sony ReaderやBarnes & Noble Nookなど、主要なリーダーはほぼ対応しているため、事実上の国際標準規格になりつつある。
IDPFは、4月6日(現地時間)に次期バージョン「EPUB 2.1」(現行バージョンは、2.0.1)に関する草稿を公開した。

EPUBは、「reflowable digital books and publications」のフォーマットである。文字主体で、レイアウトが消滅しても成立する欧文の書籍(小説など)が対象となる。簡易エディタ上のプレーンテキストをイメージしてほしい。エディタのウィンドウ幅を狭めれば、テキストは下へ流れる。逆に幅を広げると、上に集まり一行の文字数が増える。ページ割りをしても、文字のサイズを大きくすればページ数が増え、小さくすればページ数は減っていく。

Webサイトの「リキッドレイアウト」と呼ばれる手法に近い。W3C(World Wide Web Consortium)のサイトにアクセスしてみてほしい。このサイトは、リキッドレイアウトを採用している。3カラムレイアウト(3段組み)のページだが、ブラウザのウィンドウを広げると、コンテンツ全体の幅も自動的に対応する。
コンテンツ全体の幅を固定する手法は「フィックスドレイアウト」と呼ぶ。この手法で作られたWebページは、可変対応ではないためウィンドウ幅を広げると、左右もしくは右側が余白になってしまうが、ページのレイアウトが壊れることはない。

 

 

※以下、サンプルのため省略

 

 

電子書籍と電子雑誌

電子書籍には、「Reflowable Automatic Layout(リフローアブル自動レイアウト)」の書籍と「Fixed layout(フィックスド・レイアウト)」の書籍がある。
「Reflowable Automatic Layout」は、ページの概念がなく、長い巻き物のようなイメージで捉えることができる。文字主体の小説などに適しており、あらゆるデバイスに対応可能な柔軟性の高いデザインだ。「ズーム」や「スクロール」などの操作が必要なく、視認性や可読性はリーダー側の設定で向上させることが可能。より多くの読者のニーズに応えることができる。日本では、新書などの短期間で消費される書籍に適しているかもしれない。

「Fixed layout」は、レイアウトが壊れると価値が落ちてしまう「ページ」の再現性が要求されるデザインである。ビジュアル要素で構成されている雑誌の大半は、「Reflowable Automatic Layout」で表現するのは難しい。「Fixed layout」の問題点は、デバイスの最適化に手間がかかることである。特にスマートフォンなどのモバイルデバイスでは、「ズーム」や「スクロール」などの操作を読者に強いることになる。読みやすさを提供するには、何らかの仕掛けを用意する必要がある。

ただし、「Fixed layout」の問題点は、iPadなどのタブレットデバイスによって、ある程度解決される可能性がある。レイアウトを保持した状態でそのまま表示しても、ズームやスクロール操作なしで、閲覧できるからだ。

 

 

※以下、サンプルのため省略

 

 

セルフパブリッシングの可能性

週刊イーブックストラテジーでは、メールマガジンの一部をEPUBフォーマットに変換して、公開しているが、今回はそのプロセスを紹介したい。この試みは、セルフパブリッシング(個人出版)を主軸に考えており、あくまでパーソナルレベルでどこまで実現可能か、現状を把握する目的でおこなっている。

海外ではすでに、EPUB形式で自作の電子書籍を配布する事例が増えてきた。ソーシャルメディア・プレゼンスの高い人であれば、わざわざAmazonやAppleのプラットフォームに乗る必要はなく、PayPalなどで決済の仕組みを整えていれば、ソーシャルネットワーク経由でリリースすることができる。購読者の多くは、発行者のファンであり、リリース後もすぐにTwitterやFacebookなどでフィードバックが得られる。迅速にアップデートできることも、電子書籍の利点である。

 

 

※以下、サンプルのため省略

 

 

EPUBの電子書籍を発行してみよう

実際に、EPUBフォーマットの電子書籍を作成してみてほしい。今回は、ワークフローに沿って、誰でも簡単に作成できる手順を記した。こまかい調整の作業は省いているため、見栄えは完璧ではないが、電子書籍の骨格は問題なく作成できるようになっている。

手順は以下のとおりである

 

Sigilをインストールする

使用するオーサリングソフトは、マルチプラットフォーム・ウィジウィグ・イーブックエディター「Sigil」(シジル)である。以下のページから無料でダウンロードすることができる。GPLv3のオープンソース・ソフトウェアで、Windows、Mac、Linuxに対応。
現行バージョンは、0.1.9だが、ここではオーサリング機能が強化された0.2.0を使用する。ベータ版なので、多少の不具合を含む。

Sigilのバージョン0.2.0(ベータ版)は、上部にツールバー、右側が編集(オーサリング)画面、左側が「Book Browser」という構成になっている。編集画面のBook View(ブックビュー)、Code View(コードビュー)、Split View (分割ビュー)を切り替えながら、作業していく。

左側の「Book Browser」には、EPUBファイルの中身が表示されており、ファイルの新規作成や削除などを実行できる。「Book Browser」はフローティングパネルになっているので、タイトルの部分をドラッグすると、ウィンドウから切り離され、単独のパネルになる。パネル上部のタイトル部分をダブルクリックすると、編集画面の元の位置に戻る仕組みになっている。

素材をダウンロードする

まず、原稿ファイルとブックカバーの画像ファイルをダウンロードする。ZIPファイルになっているので、ダウンロード後、解凍する。


 

 

※以下、サンプルのため省略

 

 

STEP01 Sigilを起動する

 

STEP02 原稿ファイルを開く

 

STEP03 保存をする

 

STEP04 CSSファイルのリンクを記述する

 

STEP05 ブックカバーを配置する

 

 

※以下、サンプルのため省略

 

 

電子書籍の詳細なワークフローについては、次号で解説


 

ソーシャルネットワークをプラットフォームとする電子書籍:

Sigilで作成したePubフォーマットは、Stanza(iPhoneアプリ)内でダウンロードして、すぐに読むことができます。
作成された電子書籍は、「O'Reilly Media」が発行している電子書籍と同じDRMフリーです。Stanzaには、アノテーション機能や共有機能が搭載されていますので、記事を引用してFacebookやTwitterなどに投稿することができます。

既存の書籍の延長線上にある電子書籍は、DRMが重要になってきます(DRMがなければ発行できない出版社が多いと思います)。

ところが、ソーシャルネットワークをプラットフォームとする電子書籍の場合、本を”ネタ化”しやすい仕様にしておくことが優先されます。前述したとおり、ソーシャルメディア・プレゼンスの高い人にとって、大半の読者はファンであり、きちんと本を買ってくれる購読者です。読書して、感想を書いて「終わり」ではなく、FacebookやTwitterなどのソーシャルネットワーク上で、付箋を交換したり、互いにメモを閲覧し合います。著者にとっては、次回作のアイデアになっていくのです。

AmazonやApple、Googleのメガプラットフォームに乗らなくても、マイクロコミュニティで十分やっていける世界です(PayPalの決済を活用している人が多い)。ソーシャルネットワークを中心に活動する人が増えることで、セルフパブリッシングは、新しい時代に入っていくでしょう。
読者(=ファン)に、プロの編集者やデザイナーがいて、コラボレーションに発展すれば、既存の書籍で出版される可能性もあります。ソーシャルメディア・プレゼンスの高い人にとっては、ビッグイベントになります。マイナーからメジャーという認識ではなく、イベントとして読者に話題を提供できるという捉え方です。出版の工程をUstreamで生中継するなど、プロセスそのものがコンテンツになります。

 

電子書籍の利点(iPhone App Stanzaの場合):

 

海外の電子雑誌はクリッピングできるものが多い

 


付録について:

 


エディトリアル・エンジニアリング プロダクションノート

エディトリアル・エンジニアリング プロダクションノート

 


 

このページは、境祐司が運営するPodcastのテキスト版(有料メールマガジン)に関する内容を掲載しています

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