認知症で最も多いのがアルツハイマー型認知症である。ゆっくりと脳の神経細胞が死滅していき、軽いもの忘れから始まり、理解力や判断力の低下、見当識障害(時間や方向感覚、人間関係などがわからなくなる)、そして日常生活に支障をきたす。
理解力や判断力の低下によって、買い物などでも支障がでてくる。お金を支払えなかったり、同じものを何回も買ってしまうのである。
特定非営利活動法人「HEART TO HEART」(愛知県)では、「買い物セーフティーネット」という取り組みを進めている。地域の人たちに認知症についての正しい知識を伝え、認知症の人たちを見守っていこうという活動だ。
一方で、判断力の低下に乗じて、商品などを売り込む業者も増加している。
先月、「認知症の顧客狙いで売買契約をさせた」として、消費者庁から3ヵ月の一部業務停止を命令された販売業者について報じられたが、同様の被害が増えている。
参考記事(2015年5月10日):
認知症を「心」の病気と捉えてしまうと、症状を悪化させる「良くない介護」になってしまう。認知症は「脳の神経細胞が死滅していく」ことで記憶力、判断力などが低下していく病気であり、自尊心や羞恥心などは私たちと変わらない。
家族に、否定されたり、注意されることが続くと、異常な言動に発展していく。
言ってはいけないこと(例)
- 「何度も言ったじゃない、もう」
- 「違う、違う、そこじゃない」
- 「何回、同じことを聞くの」
- 「はい、こっちでしょ、こっち」
逆に、寛容な気持ちでやさしく接してくれる人には、安心感を抱く。
巧みな売り込みは、信頼関係を築き、時間をかけて進めるのが特徴といえるだろう。
売り込みの一例:
- 過去に商品を購入した高齢者の名簿がある。
- この名簿を使って、業者が雇ったパートが電話をしていく。
- サンプル商品を提供する。
- 商品を受け取った顧客に、業者の社員が電話をする。
- 商品を受け取ったこと、以前電話したことを覚えていなかったら「認知症」と判断。
- 認知症の疑いがある顧客名簿に記載。
- 業者の社員はまず「話し相手」に徹して信頼を得る。
- しばらく交流を続ける。
- 販売契約させる。
一人暮らしの場合は、家族が対応できないため、「成年後見制度」を利用するしかない。
「成年後見制度」は、判断能力の低下によって自分の財産を管理できなくなった人を支援する制度である。判断能力によって、3つのレベル「後見」「保佐」「補助」に分かれている。
ただし、必要な書類を揃えて、家庭裁判所に申し立てを行い、精神鑑定(「後見」「保佐」の場合)なども必要。手続きはかなり面倒だ。
認知症狙いの売り込みを防ぐためにも、家族がこの制度を理解し、利用できるように準備しておく必要がある。
参考:
- 法務省:成年後見制度~成年後見登記制度~
Q18 成年後見制度を利用したいのですが,申立てから開始までどれくらいの期間がかかるのでしょうか?
A18 審理期間については,個々の事案により異なり,一概にはいえません。鑑定手続や成年後見人等の候補者の適格性の調査,本人の陳述聴取などのために,一定の審理期間を要することになります。多くの場合,申立てから成年後見等の開始までの期間は,4か月以内となっています。
境祐司(Creative Edge School Books)
投稿日:2015年5月14日