HTML5パブリッシングマガジン開発日誌 Vol.03/個人出版の敷居はまだ高いのか? 電子書籍(EPUB)作成のどこが難しいのか考えてみる

2014年3月15日「個人出版の敷居はまだ高いのか? 電子書籍(EPUB)作成のどこが難しいのか考えてみる」

HTML5 Publishing Magazine Development Diary 3 :
EPUBファイルを作成するための専用オーサリングツール「sigil(シジル)」の開発が厳しい状況にあることは、eBook開発関連のフォーラムでも度々話題になっていましたが、2月9日の投稿で開発者が現在の状況について明らかにしています。

国内でも、でんでんコンバーターの開発者である高瀬さんや、達人出版会の高橋さんなどがエントリーを上げています。

 

sigilは、EPUBファイルを作成する専用のオーサリングツールとして、2010〜2012年頃まで活用し、講演などでも紹介してきました。ただ、国内では(日本語の縦書きを表現できる)EPUB 3.0から、商用フォーマットとして普及し始めていましたので、EPUB 2しかサポートしていないSigilは次第にフェードアウトしていきました。

業界の人たちは状況を理解した上で、臨機応変にsigilを利用していましたが、一般ユーザーには正しい情報が伝わっておらず、EPUB 3ファイルの作成にsigilを使う人もいたわけです。この問題は、ウェブ上に蓄積されている情報に深く関係しています。

 

 

最新情報が、過去の古い情報に勝てない

EPUBファイルの作成方法を知る手段として、ネット検索は最も手軽で、速く情報を得られます。

ところが、電子書籍元年と騒がれた2010年以降に大量の情報が発信され、未だに、この頃の古い情報が上位に表示されています(Kindle関連では、私が過去に投稿した古い情報も上位に出てきます)

これが、企業保有の技術なら、直ちに専用のサイトなり、ブログで最新の情報を投稿したり、影響力のあるブログメディアとタイアップして、特集記事を組むなど、対策を講じることで、古い情報を「検索」結果から追い出してしまいます。

 

正しい情報を「短期間で」ウェブに蓄積するには、ソーシャルメディアより、例えば「はてなブックマーク」などに露出するための施策が必要になるでしょう。業界の人を対象としたメディアだけではなく、もう少し広い層をターゲットにしたブログメディアとのタイアップ記事がよいと思います。

つまり、たんに最新情報を発信するだけではなく、それなりの仕掛けが必要だということになります。

最新情報を「良質なコンテンツ」にのせて、影響力のあるメディアから発信することで、ある程度解決できることだと思いますが、実行するのは容易なことではありませんので、啓蒙活動の範疇で地道にやっていくことになるでしょう。

 

 

どの方法を選択していいのかわからない

EPUB 3のファイルを作成する方法は、一言で説明し切れないほど、多様です。これは、EPUBの仕様が難解ということではなく、選択肢が多いということです。誰でも参照できるオープンな技術だからこそ、これだけ多岐にわたる環境が揃っているのであって、制作者にとっては有り難いことです。

問題は(どの方法を選択していいのか判断するための)全体を俯瞰できるガイドがないことです。

 

EPUBファイルを作成する方法(一例です/2014年3月15日現在):

  • テキストエディタ(Text Editor)を使う
  • コードエディター(Code Editor)を使う
  • 専用オーサリングツール(Authoring Tool)を使う
  • 専用変換ツール[デスクトップ]を使う
  • 専用変換ツール[クラウド]を利用する
  • IDE(Integrated Development Environment:統合開発環境)を使う
  • ワープロソフト+エクスポーター/プラグインを使う
  • DTPソフト+エクスポーター/プラグインを使う
  • ブログ+エクスポーターを利用する
  • 電子出版サービスを利用する

 

 

ブログ+エクスポーターを利用する
EPUB書き出しは有料プラン(月額315円から)の機能ですが、難易度は最も低いのではないでしょうか。日本語の縦書きや固定レイアウトもサポートしています。

ライブドアブログ公式サイトのスクリーンショット

 

電子出版サービスを利用する
電子出版のためのサービスですが、ウェブブラウザで使用できる専用エディターが用意されていますので、ブログで記事を更新する感覚でEPUBファイルを作成することが可能です。

パブー公式サイトのスクリーンショット

BCCKS公式サイトのスクリーンショット

 

専用変換ツール[クラウド]を利用する
原稿(テキスト)と図版、表紙などの画像ファイルを準備しておけば、簡単なタグ付けをするだけでEPUBファイルを作成できます。タグ付けは、でんでんエディターというクラウドツールが提供されています。

でんでんコンバーター公式サイトのスクリーンショット

 

ワープロソフト+エクスポーター/プラグイン
使い慣れているワープロソフトからEPUBファイルを書き出す方法ですが、書き出し機能が搭載されているソフト(一太郎やPages)とプラグイン(拡張機能)をインストールしなければいけないソフトに分かれます。縦書きをサポートしているのは「一太郎」のみです。

一太郎2014 徹 公式サイトのスクリーンショット

 

DTPソフト+エクスポーター
DTPソフトに搭載されているEPUB書き出し機能を使う方法です。プロフェッショナル向けのアプリケーションソフトなので、EPUBファイルを作成するために購入することはないでしょう。

  • InDesign CC(アドビ)
    ※Creative Cloud年間プランなら月額4,980円/InDesignのみ使用なら年間プランで月額2,180円
  • QuarkXPress (クォーク)
    ※QuarkXPress 9 Japan Editionのダウンロード版:97,000円
  • EDICOLOR(キヤノンITソリューションズ)
    ※30,000円/優待価格:24,000円

Adobe InDesign CC 公式サイトのスクリーンショット

 

専用オーサリングツール(Authoring Tool)を使う
EPUB(およびHTML、CSS)の知識は必要ですが、最も自由度が高く、意図したとおりのEPUBファイルを作成することができます。sigilは前述したとおり、EPUB 3をサポートしていませんので、FUSEeのみです。

  • sigil
    ※無償
  • FUSEe(フューズネットワーク)
    ※35,000円

FUSEe 公式サイトのスクリーンショット

 

 

選択肢が多いのは良いことですが、これからEPUBの電子書籍を作成したいと考えている人にとっては、混沌としていて、どの方法を選んでよいのか悩んでしまうと思います。

ネットで断片的に情報を収集してしまうと、「sigilで作成して、EPUBを解凍して、エディターで編集して….」といった煩雑なワークフローになってしまうため、うまく作成できなかったときに、ミスを発見するのも大変です。

一朝一夕とはいきませんが、最新の情報が、古い情報よりも上位に表示されるよう、効果的な情報発信をしていきたいですね。

 

それでは、また明日。

 

 

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投稿日:2014年3月15日

 

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