HTML5パブリッシングマガジン開発日誌 Vol.20/そもそも情報が伝わっていないのに「電子書籍は売れない」はおかしい/電子書籍を確実に売るために、やるべきこと(2)

2014年6月29日:そもそも情報が伝わっていないのに「電子書籍は売れない」はおかしい/電子書籍を確実に売るために、やるべきこと(2)

HTML5 Publishing Magazine Development Diary 20 :
昨日の記事「電子書籍を確実に売るために、やるべきこと(1)/あなたの情報はどのくらいの人に届いているのか?」の続きです。
前回は「作品発表なのか、商品販売なのか」、「発信した情報は何人に届いている?」など、基本的なことばかり列挙しましたが、全体像を俯瞰できるように、わかりやすい表現でまとめました。今回は、より具体的な事例を紹介していきたいと思います。
過去の記事:

 

今日は、個人出版をベースにして書きますが、有力な媒体(多くの読者がいるブログやメールマガジン)や情報伝達力を持たない小規模な出版社にとっても、まったく同様のことです。

 

記事の内容:

  1. 知名度のない個人の情報伝達力
  2. 情報が伝わっていないのに「電子書籍は売れない」はおかしい
  3. 一人ではすぐに限界がくる、ケータイ小説の創作環境をモデルに
  4. 原稿を掲載・更新しても「無反応」の場合

 

 

知名度のない個人の情報伝達力

どんなに顧客ニーズに応えた製品を開発しても、営業や広報、マーケティングの各部署が機能しないと、その製品の魅力を伝えることができませんので、売上に結びつきません。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、そしてネットには、製品やサービスの広告が溢れかえっていますが、その製品やサービスの存在が知られないかぎり、人は動きません。

 

個人がつくった電子書籍もまったく同じことで、ストアで発行しただけでは、期待した結果は得られません。では、知名度のない個人が持っている情報伝達力というのは、どの程度のものなのでしょう。

前回の記事では、友人、知人、仕事関係、ソーシャルメディアでつながっている人たち(の一部)で止まってしまうのではないか、と書きました。人気ブログを運営していたり、登録者の多いメールマガジンを発行している個人であれば、有力な媒体になりますが、大半の人は、届く範囲が限られているわけです。

 

 

情報が伝わっていないのに「電子書籍は売れない」はおかしい

つまり、「売れる・売れない」以前に、「〜という電子書籍を発売しました」という情報が伝わっていないことが問題です。

例えば、巷で話題になっている(多くの人が関心を寄せている)事件などに便乗し、センセーショナルなタイトルで電子書籍を出せば、状況は変わるはずです。その内容が過激であるほど、ネットの拡散力が加わり、数十倍の情報伝達で一気に広まると思います。
もちろん、絶対にお奨めできない手法ですが、人を動かす原動力とは何か、理解するにはよい例になります。

 

人を振り向かせるのが、いかに大変かは前回も強調しましたが、まずは情報を「本を読んでもらいたい人たち」に届けること。ここから解決していく必要があります。

出版社から本を出せば、営業や広報が動いてくれますが、個人出版や小規模な出版社などは、自力で同じことを実行するのは難しいと思います。

海外メディアから個人出版で大成功した人のニュースなどが流れてきますが、ニュースになるくらい、まだ少ないということです。

 

 

一人ではすぐに限界がくる、ケータイ小説の創作環境をモデルに

では、まったく打つ手がないかというと、そんなことはなく、それこそネットを最大限に活用すればよいと思っています。

前回は「執筆しながら読者を増やしていく」ことについて書きました。本を書きたいと思った「企画」段階から、ブログに原稿を掲載し、読者が現れたら、積極的に対話をして「交流」を深めていく方法です。

 

ケータイ小説の創作環境(プラットフォーム)を思い浮かべていただければ、イメージしやすいかもしれません。現在なら、エブリスタ(DeNAとNTTドコモが共同出資した会社)が運営する「E★エブリスタ」がわかりやすい例です。

E★エブリスタ

 

今日のニュースが参考になります。
映画「奴隷区-僕と23人の奴隷」原作者の岡田さん 目標定め、ついに映画化

E★エブリスタで掲載していた小説が、1660万アクセスを記録し、映画にもなった「奴隷区」の著者、岡田伸一さんに関する記事。

引用1:

アクセス数と同時に、「しおり」などから本当に読んでいると思われる人数などを細かく分析するという。また「批判的な感想の人こそ、手厚くフォローすることを心掛けている」

引用2:

自分の作品に触れてくれる人を「ユーザー」「読者」「お客さま」などと呼び分けることがあるのも、ネットを出発点にした書き手の多様な立ち位置を示しているようだ。

 

特徴は、コミュニティベースドであること。「書きたい人」「読みたい人」「売りたい人」「買いたい人」のバランスがとても重要です。

読者(ファン)が現れたら積極的に対話し、コミュニケーションしながら創作するというスタイルですが、読者の感想や意見を作品に反映させるかどうかは自分の判断です。なにより「交流」することが大切。

エブリスタは、渋谷(東京)に、著者同士が交流でき、創作活動を支援する場をオープンすると発表していますが、とにかくネットでもリアルでも、集う場を提供することで、参加する著者たちに力[モチベーション、読者(ファン)が集まるきっかけ]を与えています。

 

[余談]次回以降、マーケットプレイスの解説をしたいと思いますが、ここでは「売りたい人」「買いたい人」そして「紹介したい人(アフィリエイター等)」のバランスが重要で、プラットフォーマーはこの三者に異なった価値を提供し、マーケットを活性化させなくてはいけません。
また、「売りたい人」は、自分の情報伝達力に限界を感じているなら、「紹介したい人(アフィリエイター)」に売ってもらうという意識が必要です。

 

 

原稿を掲載・更新しても「無反応」の場合

よくブログの初心者には「アメブロ(アメーバブログ)」が勧められますが、これはアメブロ全体が巨大なマンションのような構造になっており、訪問しやすい仕組みになっているからです。

初心者がいきなり、WordPressなどでブログを始めるというのは、砂漠の真ん中に一軒家を建てるようなもので、なかなか訪問者が現れません。モチベーションを維持するのが大変ですよね。

ただ、どんなに人通りの多い駅前であっても無差別にビラを配るようなやり方は期待した効果が得られません。例えば、釣りに関する電子書籍なら、ソーシャルメディアで無差別に告知するより、釣り好きの人たちが集まるイベントに行くことです。

 

言うは易く行うは難し。
こうやって書くのは簡単ですが、具体的に、何からどう始めていくかが問題です。

ここで一度、まとめておきましょう。

(1)知名度のない個人や小規模な出版社の情報伝達力には限界がある
(2)読んでもらいたい読者に情報が届かない
(3)ケータイ小説のような創作環境モデルが参考になる
(4)本を書きたいと思った「企画」段階から、ブログに原稿を掲載し、読者との交流を深める

 

前回の記事で示した問題点は、

いくらブログで原稿を掲載・更新しても「無反応」の場合

でした。
まさに、砂漠の真ん中に一軒家を建てるようなものですから、なかなか反応を得られないでしょう。しばらくは、更新を怠らず「待つ」しかありませんが、どこかで「きっかけ」をつくることになります。

最も容易なのは「炎上」手法ですが、自分の家を燃やして人を集めるようなものです。ほとんどの人にとっては、リスクしかないお勧めできない方法です。

 

前回紹介したアッシュ・マウリャ(Ash Maurya)氏は、リーン・スタートアップというマネージメント手法に興味を持って、ブログに気付きや疑問点などを書き始め、次第に同じように関心を持つ読者が集まってきました。

参考:
ウェブの大海原から読者を探し確実に届ける仕組みと、電子出版専門の出版社をつくる方法

この場合、「リーン・スタートアップというマネージメント手法に興味を持つ」人たちが、ネット検索で情報を探していたら、マウリャ氏のブログを見つけた、というパターンだと思います。

最新の情報や話題に関連した本であれば、マウリャ氏のブログと同様に読者が集まりやすいと思いますが、検索からたどり着けないものは、期待できません。

 

さて、ここからは、ケースバイケースの領域です。
本の内容、属する分野、著者の情報伝達力などで、進め方がまったく変わりますので。

さすがに、現在コラボレーション&サポートしている方を例として出すわけにはいきませんので、架空の電子書籍を設定して、書いていきたいと思います。
(どなたか、電子書籍を提供していただければ、プロモーション計画の記事化に使わせていただきたいと思っています。もし、いらっしゃったらご連絡を)

 

ちなみに、コラボレーション&サポートの方は、問い合わせいただいた方々とメールや電話などで打ち合わせ中(お気軽に ebookcast@gmail.com まで)。

カスタム希望が多く、こちらで設定したコースではなく、各々(個人だけではなく出版社の方も)の問題に対して、一緒に解決策を考えていく形になっています。
まぁ、そうですよね。抱えている問題は様々なわけですから…

 

それでは明日、また投稿いたします。

 

追記(2014年7月7日):

ビジネス関連の記事について

こちらのブログは、電子出版のプロダクションワークやウェブ、デザイン関連の記事を中心に公開していますので、ビジネス関連の記事は分離することにしました。

形式はブログではなく、無料メールマガジンで配信いたします。7月上旬からスタートしますが、サンプル誌は公開されています。
以下のリンク先ページ、もしくは下のフォームで登録できます。

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投稿日:2014年6月29日

 

 

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