HTML5パブリッシングマガジン開発日誌 Vol.19/電子書籍を確実に売るために、やるべきこと(1)/あなたの情報はどのくらいの人に届いているのか?

2014年6月28日:電子書籍を確実に売るために、やるべきこと(1)/あなたの情報はどのくらいの人に届いているのか?

HTML5 Publishing Magazine Development Diary 19 :
昨日の記事「半年かかりましたが「電子出版は儲からない」は「間違い」と思える段階まで、やっと到達。」の続きです。
記事の後半で、著者と編集者の「共同編集の場」を構築し、そのノウハウを蓄積していくため、コラボレーション&サポートという仕組みを実践しているという話を書きましたが、具体的にどのようなことをやっているのか、数回に分けて紹介していきたいと思います。

クリエイティブエッジ・ラボ One to One

コラボレーション&サポート

 

今日は、イントロダクションに相当する内容ですが、まずは全体像を俯瞰できるように、まとめてみました。

 

記事の内容:

  1. 既刊本を「売る」のか、「売る」ためにつくるのか
  2. 作品発表なのか、商品販売なのか
  3. 発信した情報は何人に届いている?
  4. 執筆しながら読者を増やしていく

 

 

既刊本を「売る」のか、「売る」ためにつくるのか

すでに出来上がっている電子書籍を「売る」場合と、「売る」ためにこれから電子書籍をつくる場合では、進め方がまったく異なります。
ここはとても重要です。

まず、すでに出来上がっている電子書籍がどのようにつくられたのか、確認しておきます。

 

(1)100%自分が書きたい、と思うものを自由に書いた
(2)どんなストーリーにすれば、読者が楽しめるのか、考えながら書いた
(3)友人・知人に意見や感想をもらいながら、何度もストーリーを練り直して書き上げた
(4)ブログなどで執筆途中の原稿をアップしながら、意見や感想をもらい、完成させた

 

(1)は、自分が「書きたい」「作りたい」という創作意欲だけで、書き上げた作品です。

(2)は、読者の存在を常に意識し、どういう内容にすれば「興味を持ってくれるのか、楽しんでくれるのか」考えながら書かれた作品。

(3)は、自分の思いだけではなく、身近な人たちの意見や感想を聞き、参考にしながら、書いた作品。

そして、(4)は、ネットで執筆中の原稿を公開しながら、意見や感想をもらい、オープンな進め方で書き上げられた作品です。

 

すでに出来上がっている作品を出版社に持ち込んだ場合、その作品が「売れるかどうか」は、編集者が判断すると思います。修正可能ならアドバイスをしてくれますし、売るのは難しいと判断された場合は、その旨を伝えられるはずです。

 

電子出版は、著者一人で発行できてしまうため、この「売れるかどうか」の検証プロセスが実行されない場合が多いと思います。

編集者が「これは売れる」と思っても、本当に売れるかどうかはわかりませんが、少なくとも検証なしで発行された作品よりは、「商品としての」完成度は向上します。

 

 

作品発表なのか、商品販売なのか

Kindleなどの電子書籍ストアをブログのようなカジュアルな作品発表の場として、利用するだけなら、「売れる・売れない」はあまり気にする必要はなく、Kindleという(読者にとって)利便性の高いプラットフォームで、より多くの人にアピールできることが利点になります。

もし、出版社で本を発行するように、「売れるかどうか」を重視したいなら、前述した検証プロセスが必須です。

 

すでに出来上がった電子書籍が「売れるかどうか」を確認する最も手早い方法は、期間限定の無料公開。例えば、3日間だけ無料でダウンロードできるようにして、反応をみます。
無料にもかかわらず、ほとんどダウンロードされないのであれば、興味を持たれていないのですから、販売しても売れない可能性が高いと思います。

 

 

発信した情報は何人に届いている?

もっと重要なことは「そもそも、発信している情報が、どのくらいの人に届いている?」ということ。ほとんど届いていないのなら、いくら「無料ダウンロードできます!」と発信しても、反応ないのは当然のことです。

もっと言えば、いくら編集者が加わって、検証プロセスを実行し、完成度を高めた作品をつくっても、多くの人にその情報が届かなければ、売れないわけです。

 

新作の劇場映画の公開が迫ってくると、監督や出演者が全国をまわって宣伝をします。そして、メディアがその様子をニュースにして紙媒体、映像媒体などで伝えます。また、映画の主役俳優が、朝から夜まで、さまざまなテレビ番組に出演して、宣伝を繰り返す場合もあります。

これは、プロも素人もまったく同じことで、その作品の存在が知られないかぎり、人は動かないわけです。

 

知名度のない個人が情報を発信して届く範囲は限定的です。友人、知人、ソーシャルメディアでつながっている人たち(しかも全員ではない)でほぼ止まります。
たとえ、伝わったとしても、いいね!が付いたり、リツイートされるだけで、実際に買ってもらえるかどうかは、メッセージの内容によります。これは明日のテーマです)

個人の発信する情報は意外と届かない

伝わっても刺さる言葉じゃないと動いてもらえない

 

例外は以下の場合です。

(1)ブログに多くの読者がいる
(2)メールマガジンを発行していて多くの登録者がいる

 

特に、メールマガジンの場合は、ダイレクトに届けられますので、効果が期待できます(※もちろん開封率によります)。どんなに最先端のIT企業であっても、未だにメールマガジンは有力な伝達手段として利用されているのですから。

 

 

執筆しながら読者を増やしていく

もう一度、電子書籍がどのようにつくられたのかを確認。

 

(1)100%自分が書きたい、と思うものを自由に書いた
(2)どんなストーリーにすれば、読者が楽しめるのか、考えながら書いた
(3)友人・知人に意見や感想をもらいながら、何度もストーリーを練り直して書き上げた
(4)ブログなどで執筆途中の原稿をアップしながら、意見や感想をもらい、完成させた

 

実は、最も理想的な執筆は(4)だと思っています。

本を書きたいと思った「企画」段階から、ブログに掲載していく方法です。(リーン・スタートアップでいえば)カスタマーディベロップメントを同時に進めることになりますので、更新を続けるほど「読者」に出会う可能性が高くなります。

参考:
同様の方法で本を出版したアッシュ・マウリャ(Ash Maurya)氏の例を記事で紹介していますので参考にしてください。
ウェブの大海原から読者を探し確実に届ける仕組みと、電子出版専門の出版社をつくる方法

アッシュ・マウリャ氏はリーン・スタートアップの手法で発行

 

本が完成してから、宣伝することがいかに大変なことかお話してきましたが、執筆しながらある程度のファンを獲得できるのなら、状況は変わってきます。

 

例えば、ブログで「一度、いろいろ意見を聞きたいので、飲み会でもいかがですか?」と書き、読者の人たちと交流できれば、各々のソーシャルメディアで、その様子が拡散され、「何かやっている」という小さな種がまかれます。この段階では「小さな」種でいいのです。

本が発行される前から、作品の世界観を把握し、期待してくれている読者がいることの心強さは、著者のモチベーションにも直結しますし、本が完成したら、喜んで宣伝してくれると思います。

 

問題は、いくらブログで原稿を掲載・更新しても「無反応」の場合です。
知名度のない個人(大半の著者)は、そもそも問題として、ブログが知られていないわけですから、いきなり、人が集まるとは思えません。

どうやって突破するかは、『「売る」ためにこれから電子書籍をつくる』場合の重要な施策になりますので、明日書くことにします。

 

大半は、本が完成してから宣伝すると思いますが、多くの著者は、友人、知人、ソーシャルメディアでつながっている人々の周辺が情報伝達の限界で、ブログも育っていない場合は、たとえニーズがある本でも、知られることなく、埋もれてしまう可能性が高いといえます。

 

明日は、具体的にどうやって、自分の本の存在を伝えていくのか、事例を紹介してみたいと思います。

売るために商品・製品をつくる場合のワークフロー

 

 

追記(2014年7月7日):

ビジネス関連の記事について

こちらのブログは、電子出版のプロダクションワークやウェブ、デザイン関連の記事を中心に公開していますので、ビジネス関連の記事は分離することにしました。

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投稿日:2014年6月28日

 

 

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