2014年7月2日:EPUB をコミュニケーションインフラに載せた初めての取り組み「Tw-ePub」
HTML5 Publishing Magazine Development Diary 22 :
東京ビックサイトで、第18回 国際電子出版EXPO(および第21回 東京国際ブックフェア)がスタートしました。本日、午前11時から予定されていた「KADOKAWAとTwitterによる世界初のサービス発表会」は、注目が高く、気になっていた方も多かったと思います。
ネーミングは「Tw-ePub」、電子書籍(EPUB)を埋め込んだツイートを投稿でき、タイムライン上でダイレクトに読むことができる日本だけの「試し読み/共有」サービスでした。現在は、KADOKAWAの電子書籍が中心で約2万点、将来的には個人がこの仕組みを利用して、電子書籍を埋め込めるようになる可能性もあるとのこと。
技術的にはそれほど新規性の高いものではなく、すでにウェブブラウザーで利用できるEPUBビューアとして「BiB/i(ビビ)」が普及しており、電子書籍の試し読み版をブログなどに設置している人も多いと思います。
「Tw-ePub」のEPUB ビューアは、角川アスキー総合研究所が開発した「Light Epub Viewer」で現在のバージョンは「0.9.4.9」
EPUB ビューア
Light Epub Viewer version 0.9.4.9
(c) 2014 KADOKAWA ASCII Research Laboratories, Inc.
This software is released under the MIT License.
http://opensource.org/licenses/mit-license.php
この取り組みで注目すべきは、Twitterというコミュニケーションのインフラに搭載したことでしょう。
「Tw-ePub」のサイトに置かれている全ての電子書籍には、Twitterアイコンが設置されており、1回タップ(クリック)するだけで、投稿することができます。
片手で使うことが多いスマートフォンでは、閲覧(スクロール)から選択(タップ)、書き込み、投稿(タップ)まで、いかに操作ステップを減らせるかが重要になってきます。
タイムラインのスクロールを止めずに(ブラウザーなどに飛ばずに)、一連の操作を実行できるメリットは、意外と大きいのです。
サービスの概要:
「tw-epub.com」上の電子書籍に付けられているTwitterアイコンをタップするだけ、投稿することができます。ツイートを展開すると、電子書籍(EPUB)のサムネイルが表示され、タップすると「Light Epub Viewer」が起動。
動作は軽快で、ストレスなくページを進めることができます(ここでは、iPhone 5を使用)。あくまで、試し読みの機能として提供されており、ブラウザー上で動作しているため、レンダリングは商品と同等ではありません。
最後のページに設置されている感想ツイートもタップするだけで投稿できます。
投稿されたツイートから「tw-epub.com」を表示できます。電子書籍の下部にTwitterアイコンと「あとで読む」アイコンが設置されています。「あとで読む」アイコンをクリックすると、リストに記録されます。
パソコンのTwitterでは、タイムラインに電子書籍のサムネイルが表示されますので、かなり目立ちます。スマートフォンと同様、軽快に動作します。
使用しているウェブブラウザーの文字サイズ変更は、反映されます。試し読みの機能としては十分でしょう。
ピボットする前の「Graphicly」は(2010年〜)は、ウェブブラウザーで読めるコミック・ストアでしたが、革新的だったのが、コミックのコマを自由に切り抜き、Facebookなどで共有できたこと。
全てのコミックが対応していたわけではありませんが、コマにコメントを埋め込んだり、切り抜いて投稿するなど、かなり自由度の高い共有機能でした。
この共有機能によって、コミックを紹介し合う行為が増え、プラットフォームにも活気が満ちていたことを思い出します。
今日発表された、KADOKAWAとTwitterによる試し読み&共有サービスは、私が今、積極的に取り組んでいる電子書籍のマーケティング、プロモーションを考える上で、大変頼もしい試みだと思っています。
あとは、どのくらいのユーザーがこのサービスを受け入れるか、ですね。
「Tw-ePub」は、前述した「BiB/i(ビビ)」や過去、実践されてきた共有サービス(ツイパブなど)の延長線上にあるサービスといってもよいでしょう。主要な電子書籍ストアが出揃い、EPUB 3も普及し始めた2014年こそ、次のフェーズに移行する絶好のタイミングであり、今回の試みは自然な流れだと思います。
参考:
- [2011年6月]ソーシャル読書の「ツイパブ(β)」、PCからも利用可能に
- [2010年10月]「クラウドの上に星雲を」 角川が電子書籍プラットフォーム、Twitter連携も
参考:
HTML5パブリッシングマガジン開発日誌:
- 2014年7月1日「E★エブリスタはファンコミュニティ、noteはフリマ的クリエイティブマーケット/電子書籍を確実に売るために、やるべきこと(3)」
- 2014年6月29日「そもそも情報が伝わっていないのに「電子書籍は売れない」はおかしい/電子書籍を確実に売るために、やるべきこと(2)」
- 2014年6月28日「電子書籍を確実に売るために、やるべきこと(1)/あなたの情報はどのくらいの人に届いているのか?」
- 2014年6月27日「半年かかりましたが「電子出版は儲からない」は「間違い」と思える段階まで、やっと到達。」
- 2014年5月14日「自分の書店を持ち、6つの電子書籍ストアで販売する[BCCKSの活用]」
- 2014年5月10日「本の予告動画「ブックトレイラー」を無料アプリ「Adobe Voice」でつくろう!」
- 2014年5月09日「Webデザイナーの情報収集力と仕事の速さを活かして電子出版」
- 2014年5月08日「ウェブキャスト「HTML5と電子出版/開発日誌 Vol.01(50分)」とスライド資料(PDF)の公開」
- 2014年5月02日「ウェブ表現の可能性を追求する「4時間で学ぶ Adobe Edge Animate CC 基礎編」をリリース」
- 2014年4月25日「昭和の物知りオジさん一考察」
- 2014年4月18日「電子書籍の作り方を学ぶサイト「電子出版の学校」を公開」
- 2014年4月03日「AndroidタブレットだけでEPUB 3 固定レイアウトの本を作成(Book Creator for Android)」
- 2014年3月28日「評価モニターを募集しています「Kindleストアで販売する電子書籍の作り方」」
- 2014年3月24日「やっとリリース、3時間で学ぶ「Kindleストアで販売する電子書籍の作り方」」
- 2014年3月19日「電子出版の未来を考え、創造していくために今からやること」
- 2014年3月18日「WordPressでHTML5アニメーションを毎日投稿することも可能です」
- 2014年3月17日「電子書籍を読者に「見つけてもらう」ために/コンテンツマーケティングの領域に踏み込み、2ヵ月間実践した結果を報告します」
- 2014年3月16日「電子書籍やランディングページでストックフォトを利用する方法を紹介します」
- 2014年3月15日「個人出版の敷居はまだ高いのか? 電子書籍(EPUB)作成のどこが難しいのか考えてみる」
- 2014年3月14日「ウェブと電子出版の今後について考えてみませんか?」
- 2014年3月13日「ウェブマガジンの開発日誌を始めました!」
只今「コラボレーション&サポート」進行中&募集中
イラストレーター、マキセ ヒロシさんの新作(電子書籍絵本)のプロモーション・プロジェクトがスタート
投稿日:2014年7月2日
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