HTML5パブリッシングマガジン開発日誌 Vol.18/半年かかりましたが「電子出版は儲からない」は「間違い」と思える段階まで、やっと到達。

2014年6月27日:半年かかりましたが「電子出版は儲からない」は「間違い」と思える段階まで、やっと到達。

HTML5 Publishing Magazine Development Diary 18 :
3月にパブリッシャー宣言してから、サイトのトップページ(design-zero.tv)に設置したカウンターが静かに時を刻み続けています。残り65日となりました。
7月7日にサイトやストアなどが正式オープンし(といっても外観は変わりません)、9月から本格始動という予定。

 

小資本で始められる電子出版の難しさ

2010年頃に立ち上がった独立系の電子出版専門パブリッシャーの大半はすでに存在していません。共通しているのは「小資本」「薄利多売」であったことです。逆に現在でも順調なところは、専門領域に特化して適正な価格で売れているパブリッシャーか(ウェブデザイン系電子書籍のA Book Apartなど)、Open Road Mediaのようなマーケティングカンパニーです。

小資本ではどうしても、やれることが限られますので、効果的な広告出稿や大手が仕掛けるキャンペーンのような方法は無理です。

昨年、広告代理店の方との雑談で、「広告打たなくても、ソーシャルメディアやブログを育てて、頑張れば..」などと電子出版事業について語ったとき、「それでうまくいったら、うちで特集記事組ませてよ。」と返されたことを今でも思い出します。
もし、それが出来たら大変なことだから、特別な事例として紹介させて、という意味です(特別な事例はニュースになるということで)。

その後、出版に限らず、さまざまな分野の経営者の方を紹介してもらって話を聞きましたが、「利益が見込める紙の本から始めないと大変なことになる」と感じ、一回リセットしようかと考えました。
ただ、そうなると、わざわざパブリッシャーになる必要はなく、著者のままで良いわけです。デジタルパブリッシングの可能性に賭けるわけですから。

 

小資本で始められる電子出版は、ウェブメディアで記事などを発表されている方々には新たな媒体として大きな可能性を秘めています。ただ、電子書籍専門の出版社としてまわすには、計画が必要です。

 

 

本をどうやって読者に知らせるか

成功している独立系のA Book Apartなどは、A List Apartというウェブマガジンで世界中のファンをすでに獲得しており、出版のビジネスモデルだけ参考にしてもあまり意味がありません。An Event Apartという会議ビジネスも成功させています(O’Reilly Media も同様)。

やるなら、Open Road Mediaのようなマーケティングカンパニーになるしかありません。精魂込めて作り上げた本をどうやって読者に知らせるか、を戦略的に実行できる出版社にする。
これが、昨年12月に判断したことです。

現在の電子出版のビジネスモデルですと「薄利多売」になってしまうため、とにかくタイトル数が必要になります。小資本ビジネスでは、どう考えても短命に終わる可能性が高い。

自分の力量ではどうにもならないため、1月からはリーン・スタートアップというマネジメント手法に沿って、進めることにしました。必要最低限のコンテンツをつくり、初期ユーザー(アーリーアダプター)の方々の力を借りて、何度も仮説検証を繰り返す、というやり方です。
その「やり取りの場」が、ウェブキャストでした。

 

2013年
ウェブキャスト開始
電子書籍メディア論ウェブキャスト

電子書籍メディア論ウェブキャスト

 

2014年1月
情報発信の場(ブログ)
eBook Strategy Magazine

eBook Strategy Magazine

 

2014年2月
直販ストアの準備
デジタルコンテンツの販売

コンテンツのストアページ

 

2014年4月
オープンエデュケーションの基盤づくり
電子本のつくりかた | 電子出版の学校

電子本のつくりかた | 電子出版の学校

 

2014年6月
直販ストアのプレオープン
クリエイティブエッジ・ストア

クリエイティブエッジ・ストア

 

これを一度にやると、人もお金もかかり、もし、思い込みのまま作り込んでしまったらアウトです。
とにかく、一人でやれる範囲で「小さく」、でも「素早く」進める。

「大きなプロジェクトにしない、小さく、小さく、でもスピード重視、何度も軌道修正」だけ守って、あとはコンテンツの企画に集中。
やることはシンプルで、誰にでも実行できることなのですが、「話を聞きに行く」が基本ですから、とても地味な仕事です。

マーケティングについては、アウトバウンドな情報発信だけではなく「見つけてもらえる」施策を実行できるように、土台づくりを進めていますが、こちらも地道な作業の繰り返しです。

でも、コンテンツは着実に売れ始めています。

 

 

著者と編集者の共同編集の場

マーケティングの話は(まだ文章化できるレベルではないので)割愛しますが、9月の本格始動までにやっておきたいことは以下の2点。

  • 著者と編集者の共同編集の場
  • 直販ストア立ち上げの協力

 

著者と編集者の共同編集の場は、必須の仕組みとして捉えており、A Book Apartの共同創設者であるマンディ・ブラウンさんが立ち上げた執筆のための共同編集プラットフォーム「Editorially」に近いイメージ。

20140627_editorially_2

 

余談ですが、Editoriallyは、ウェブ業界の名だたる方々が絶賛し、応援していたサービスだったわけですが、今月サービス終了となりました。もう、サイトはありません。前述したリーン・スタートアップで指摘されている失敗したスタートアップの典型的な例だったと思います。

20140627_editorially_1

20140627_editorially_4

 

 

専門店同士のコラボレーション

著者と編集者の「共同編集の場」に必要な機能は何か、まだ明確になっていません。多分、使う側のノウハウの蓄積が最も重要で、そこが完成しないと、いくら優れたシステムを導入しても、うまく使いこなせず、けっきょく従来のやり方に戻ってしまうのではないかと思っています。

今は、サイボウズLiveを使用していますが、9月までに実践経験を積む必要があるため(修羅場の経験も必要)、コラボレーション&サポートという仕組みを開始しています。

昨年から、同様の方法で10人(現在は2名)ほど実践してきましたので、スキームは出来ています。

 

クリエイティブエッジ・ラボ One to One

クリエイティブエッジ・ストア One to One

 

この「共同編集の場」で、「直販ストア立ち上げの協力」もやりたいのです(現在2名打ち合わせ中。募集中です!)。

 

自分のストアだけでは限界があるため、専門店同士のコラボレーションで新しい価値を生み出し、デジタルコンテンツの可能性を広げていきたいという考えです。
個人出版プラットフォームの「BCCKS(ブックス)」には「書店」機能があって、他著の本も紹介することができるのですが、とても良いアイデアだと思っています。

 

例えば、SF小説の専門ストアがあれば、新作のビジュアルデザインを私のストアで担当し、そのメイキングをコンテンツ化することで、ストーリーの世界観を広げられますので、2つのストアの同時プロモーションを展開できます。

規模は小さくてかまわないので、このようなコラボレーションを複数のストアでやっていきたい。

現在やっているコラボレーション&サポートは、フルタイムなので(土日も!)、そこそこの金額にしなくてはいけませんが、まずは軌道にのせたいですね。
9月には終了し、ここで得たノウハウを著者と編集者の「共同編集の場」で活かしていきたいと思っています。

 

具体的な施策については、明日また書くことにします。

 

追記:
9月本格始動後、電子書籍の第一弾は「旅」の本を考えています。
[file-734]「電子書籍の第一弾は「旅と音風景」のエッセイ集/クリエイティブエッジ・ストア」- 新しい書籍のカタチ(304)

 

 

追記(2014年7月7日):

ビジネス関連の記事について

こちらのブログは、電子出版のプロダクションワークやウェブ、デザイン関連の記事を中心に公開していますので、ビジネス関連の記事は分離することにしました。

形式はブログではなく、無料メールマガジンで配信いたします。7月上旬からスタートしますが、サンプル誌は公開されています。
以下のリンク先ページ、もしくは下のフォームで登録できます。

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HTML5パブリッシングマガジン開発日誌:

 

 

投稿日:2014年6月27日

 

 

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